新型コロナウイルスの流行により、家庭や保育園などでみんなが衛生管理を徹底した結果、急性中耳炎の発症者が減りましたが、赤ちゃんがかかりやすい中耳炎や耳の病気は引き続き注意が必要です。どんな病気にかかりやすいのかを確認しておきましょう。
1歳までに60%以上がかかる中耳炎。夏も要注意!
アメリカの調査では、「1歳までの62%、3歳までの83%の子が急性中耳炎にかかる」とされるくらい、中耳炎は発症頻度が高い病気。特に赤ちゃんの場合、鼻やのどから耳へと、ウイルスや細菌が伝わりやすい構造をしているため、ちょっとかぜをひいただけでも中耳炎にかかりやすいのです。
未成熟な赤ちゃんの耳は、大人と比べてウイルスや細菌が入り込みやすい構造をしています。鼻やのどから耳に通じる「耳管」は、大人の場合は細くて普段は閉じていますが、赤ちゃんの場合は太く、短く、傾きもゆるやか。だから、普通の姿勢をとっていても、鼻の奥にあるウイルスや細菌が耳に入り込みやすいのです。
さらに、赤ちゃんはかぜウイルスに対する免疫力が大人よりも低いため、月齢が低くてもかぜをひく可能性が。かぜをひいたときは、常に中耳炎の可能性を意識して。
完治しづらい最近の中耳炎
ここ数年は、薬が効かない「耐性菌」による中耳炎が赤ちゃんに増加していることも問題に。耐性菌とは、通常の抗生剤を使っても退治することができない細菌のことで、完治まで1ヶ月ほどかかる「難治性中耳炎」の原因とされています。
ママ世代が子どもの頃は、中耳炎は1週間〜10日ほどで治っていたので、完治までの期間が3〜4倍にも!耐性菌に対しては、軽い中耳炎なら抗生剤をむやみに使わず、使う場合はペニシリン系の薬を多めに処方する、といった治療が行われています。中耳炎の最新情報を知って予防したいですね。
〇〇だから「中耳炎」になりやすい!
夏かぜのはやる時季だから
急性中耳炎は、鼻やのどから入り込むウイルスや細菌による「かぜ」がきっかけで起こります。夏かぜのウイルスがあちこちにまん延する夏の季節は、かぜと同様に、中耳炎のリスクも高くなるのです。
保育園でもはやりやすいから
多くのよその子どもに接触する集団保育の場で、近年、難治性の中耳炎が増えていることが問題になっています。集団保育の場にいる赤ちゃんは、特に念入りに、完治するまで治療することが大切。
プールの水で粘膜が荒れやすいから
プールの水には消毒薬が使われています。プールの水が鼻や口から入ると、のどや鼻の粘膜が荒れてウイルスに感染しやすく、かぜをひくことにも。それが中耳炎にかかるきっかけになります。
暑さ・疲れで体力&免疫力が落ちるから
熱帯夜が続き、昼間は炎天下。このような夏の暑さそのものも、体力消耗の原因になります。体力が落ちると、かぜに抵抗するための免疫力もダウン。その結果、中耳炎にかかりやすくなります。
子どもの様子をチェック!「急性中耳炎」の発症サイン
発熱、鼻水、耳をしきりにさわる、黄色い耳だれなどの症状があったら、「急性中耳炎」の疑い大。突然泣きだしたり、わけもなくグズグズしたり、ミルクの飲みが悪いといった症状も、この病気にはよくみられます。
急性中耳炎では、鼻やのどについたウイルスや細菌が、中耳に入り込んで炎症を起こします。
生後半年ごろまではママからもらう免疫があるから大丈夫、と思いがちですが、かぜに対する抗体はかかってから2〜3ヶ月で消えてしまいます。そのため、ママから赤ちゃんには免疫が移行せず、生後すぐでもかぜをひいたり、中耳炎になる可能性は十分。
【耳だれ】
急性中耳炎を起こすと、中耳にうみがたまって薄い鼓膜がはれあがります。鼓膜が破れるとうみが出て、黄色くドロッとした「耳だれ」に。赤ちゃんの耳の周りがカピカピに乾燥しているときは、要注意。
【発熱】
37.5度以上の熱が3日以上続いたら注意。発熱は、代表的な急性中耳炎の症状です。小児科でかぜの治療を続けていても熱が下がらないときは、中耳炎の疑いが。早めに耳鼻科を受診しましょう。
【急に泣き出す】
鼻やのどの調子が悪いとき、突然機嫌が悪くなったりグズグズしたり、泣きやまなくなったら、「耳痛」が現れているサイン。痛みのために夜中も眠れないということがあります。すぐに受診を。
【耳をさわる】
赤ちゃんは、2歳ごろになるまでは「どこが痛いか」を伝えることができません。しきりに耳をさわったり、むしるようにかいたり、耳のほうに手をやる、といったしぐさが、中耳炎発見の手がかりに。
【頭を左右にふる】
頭を左右に振るのも、急性中耳炎の重要なサインです。耳の中の不快感を、頭を振ることによって軽くしようとしている証拠。グズグズと機嫌が悪く、頭を振るようなら、原因は耳にあると考えて。
【聞こえがよくない】
鼓膜の奥に滲出液がたまる「滲出性中耳炎」の場合、耳の聞こえが悪くなります。かぜや急性中耳炎の治りぎわに、何度呼びかけても気づかなかったり明らかに反応が鈍いときには、耳鼻科へ。
急性中耳炎になったらどんな治療をするの?
●軽症のときは、鼻水を吸引し、抗炎症薬で鼻の治療を。中耳にうみがたまっている場合は、鼓膜切開でうみを取り出します。
●滲出性中耳炎の場合も鼻炎の処置を行い、耳管の空気の通りをよくする治療が行われます。鼓膜切開をしてたまった液を吸引したり、鼓膜チューブを留置する場合も。
●点耳薬は鼓膜に穴があいていない場合は吸収されないため、処方薬の多くは内服薬です。
夜中に耳を痛がったら、耳鼻科や小児科でその子のために処方された鎮痛解熱薬を使っていいでしょう。治療薬は自己判断でストップしてはダメ!医師に「もう大丈夫」と言われるまでしっかり飲ませてください。
耳全体を冷たいタオルやタオルで包んだ保冷剤で冷やすと、痛みがラクになります。
鼓膜の奥に液がたまる「滲出性中耳炎」にも注意!
急性中耳炎の治りぎわや、のどの奥にある「アデノイド」の肥大などによって耳管の働きが悪くなって起こるのが、「滲出性中耳炎」。
鼓膜の奥に滲出液がたまり、音を聞き取りにくくなるため、鼻炎の治療のほか、鼓膜切開をして滲出液を吸引したり、鼓膜にチューブを通して空気の通りをよくする治療が行われます。
発熱や痛みなどの目立った症状がないので要注意。急性中耳炎の治療後、念のため1ヶ月後に再受診するのが早期発見のポイントです。