不幸にも不慮の事故で亡くなってしまう子ども達は後を絶ちません。「事故」というと交通事故を思い浮かべますが、圧倒的に多いのは家庭内の事故。厚生労働省の人口動態調査のよれば、0歳では90%以上、1~4歳では80%以上が家庭内の事故で亡くなっています。
中でも窒息事故は、63%が0歳、14%が1歳と、赤ちゃんに多いのが特徴。ベッドとマットの間に頭がはさまったり、食べ物の誤えんのほか、「誤飲」による窒息も少なくありません。ちょっと目を離したすきに、身の回りにあるものを口にして息がつまってしまったり、あるいは有害物質を飲んで命に危険が及んだ症例も多々あります。
そこで、万が一子どもが誤飲をしてしまった時にどう対処すればいいのかを、小児科医の渡辺とよ子先生にうかがいました。いざという時に愛するわが子の命を救うために、ぜひ覚えておいてください!
まずは冷静に飲んだものをチェックして
誤飲の対応は、何をどのくらい飲んだのか、体内で吸収されるか、吸収されたら害があるのか、などで対処が違います。体に吸収されない小さなおもちゃやアクセサリーなら、排泄されるのであわてなくても大丈夫。
刺激の強いもの、毒性の強いものは急いで対処する必要があります。吐かせると気道を傷つけるなどかえってよくないものもあります。
まずは3つのポイントをチェックしましょう。
Check1 何を飲んだのか
少しの時間、目を離していたら様子がおかしい…。呼吸困難などのあきらかな異変ではなくても、「何かおかしい」と感じたら、誤飲を疑って口の中を確認しましょう。口の中に見当たらなかったら、何かなくなっていないか、周囲の確認もしてみてください。
Check2 どのくらい飲んだか
飲んだものだけでなく、飲んだ量によっても対応は違います。タバコの場合は2㎝以上飲み込んだ、またはニコチンが溶け出した水を飲んだ場合、吐かせてから即病院へ連れていく必要が。一方で、少量なら様子を見てかまわないものもあります。
Check3 本当に飲んだのか
「何かおかしい」と感じたけれど、しばらく様子を観察しても子どもに変化がなく、ふだんどおりに機嫌よく過ごしているなら、誤飲ではない可能性も。なくなっていると思ったものが本当にそこにあったのかどうか、家中を探して再度確認を。
液体や小さな固形物を飲んだ時のケア
チェックしたうえで、飲んでしまったことが判明したらどうすればいいのでしょうか?まずは、液体や小さな固形物を飲んでしまった場合の対処法をご紹介します。
これを飲んだら大至急病院へ!
❶エタノール主成分のもの香水、ヘアトニックなど
❷揮発性の高いものマニキュア、除光液、灯油、ガソリンなど
❸強酸性、強アルカリ性のもの漂白剤、排水パイプ剤、カビ取り剤、トイレ風呂用洗剤など
❹電気が流れるもの・とがったものボタン電池、くぎ、針、画びょう、ガラスなど
❺毒性の強いもの医薬品、タバコ、吸殻を入れた水、ホウ酸だんご、防虫剤など
刺激が強い、毒性が強いものばかりで、非常に危険です。大至急受診を!❺の毒性の強いものの場合は、のどの奥(舌のつけ根)に指を突っ込んで吐かせてから病院へ行きましょう。
❶~❹の場合は吐かせることなく即刻受診を。特に注意したいのがボタン電池です。ボタン電池を飲み込むと、食道にペタリとはりつき、とどまった場所で電気が流れて粘膜がただれてしまう恐れが。魚肉ソーセージにはさんだ実験では、10 分未満で肉が焼け始め、1時間後には写真のような状態に!
こうした事態が体の中で起こる可能性があるのです。古い電池をとり替える時に、うっかり置き忘れたりしないように注意しましょう。
これを飲んだ時は、応急処置をして早めに病院へ!
❻小さな固形物や石けん類ボタン、固形石けん、食器用洗剤、シャンプー、リンスなど
❼化粧品化粧水、乳液、クリーム、ファンデーション、口紅など
❽その他渦巻き状の蚊取り線香、紙類、酒類など
一刻を争うものではありませんが、早めに受診しましょう。❻~❽はすべて、のどの奥に指を入れて吐かせてから、病院へ。
飲み込んだと思ったけれど探してもなくなったものがない、あるいは、口の中に入っていたけれど取り出したらケロッとしている、というような場合は様子を見ればOKです。
のどにものが詰まった時のケア
飲んだものがのどに詰まってしまった場合は一刻を争います。
☐呼吸が苦しそう☐突然、激しく咳込む☐顔色が悪くなってきた
☐意識がなくなる☐呼吸が弱くなる上記の症状に当てはまる場合は、すぐに救急車を呼びましょう。その上で救急車が到着するまでの間、詰まったものを吐き出させるための応急処置を行います。ただし、口の奥まで無理に指を入れ込むのは避けましょう。
0歳代の応急処置
うつぶせにして指であごを支え頭をやや下げる。手のつけ根で肩甲骨の間を素早く5回たたきます。
1歳以上の応急処置
あごに手を添えてそらし、 太ももで支えて体をななめに。手のつけ根で肩甲骨の間を素早く5回たたきます。
それでも窒息が解除できず、意識がない状態の場合は、心肺蘇生(胸骨圧迫)を行いながら救急車を待ちましょう。
0歳代の胸骨圧迫の方法
圧迫する場所を決めます。片手の人さし指を赤ちゃんのどちらかの乳首に当て、中指と薬指を折り曲げた場所が圧迫ポイント。
中指と薬指をまっすぐに立てます。爪が伸びていても、指をまっすぐにするのが確実なマッサージのためのコツです。1秒に2回ぐらいのテンポ。胸の厚み1/3が沈むぐらいの速さで絶え間なく押しましょう。
1歳以上の胸骨圧迫の方法
胸骨の下半分に手のつけ根を押し当てます。体の大きさに合わせて両手、または片手を使います。押す場所は胸の真ん中が目安。1秒に2回ぐらいのテンポ。胸の厚み1/3が沈むぐらいの速さで絶え間なく押しましょう。
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これくらいなら大きいから飲み込む心配はないだろう、なんて安心しないで。直径4cm以下のものは飲み込む可能性があります。日頃から赤ちゃんの身の回りに置くものについては、最大限の注意を払ってくださいね。
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