魚に含まれる良質の脂質DHAこそ、乳幼児期にたっぷりとりたい栄養素。育脳栄養素No.1とも言われるDHAのパワーについて、小児科医で発達脳科学者の成田奈緒子先生が解説します。
脳を育てるDHAは食事からしか摂取できません
魚に多く含まれ良質な脂質であるDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)は、必須脂肪酸といわれ、体内でつくることができないため、食事から摂取する必要があります。
特に、育脳栄養素といわれ、脳を活性化するDHAは、脳の神経細胞の主な成分となり、記憶力や学習能力を高める働きがあるため、乳幼児期にたくさんとりたい栄養素なのです。
赤ちゃんの脳は、ママのおなかの中にいるときから急速に成長しています。妊娠中は胎盤を介して、授乳中は母乳からDHAを摂取しています。
ですから、DHAは、妊娠中から積極的にとりたい栄養素なのです。また、脳が形成されるころからDHAをとることで、脳にDHAが集まりやすくなると考えられています。
食事から摂取した脂質は、体の中でさまざまな脂肪酸に変換され、脳や細胞膜に届きます。記憶力や学習能力をつかさどる海馬にDHAが集まると、脳が活性化するといわれています。このようにDHAは、脳の発達に深くかかわる重要な栄養素なのです。
どんな魚を食べるのが効果的?
DHAは、まぐろや鮭、ぶり、あじ、さんま、さばなどの青背魚に多く含まれています。ただし、魚の種類によって含有量が異なるので、効率よくとるためには魚の種類を選ぶこともポイント。離乳食期は食べられる魚の種類が少ないので、あせらずゆっくりでも大丈夫。
また、魚には良質なタンパク質、骨や歯をつくるカルシウム、骨を強くするビタミンDなど、成長期に欠かせない多くの栄養素も含まれているので、魚料理を献立にとり入れるように意識しましょう。
ただし、一度に大量に摂取するのではなく、毎日こまめに1g(=1000㎎)程度を目標にとり入れることが大切です。モグモグ期からは、まぐろや鮭を、カミカミ期からは、さんま、ぶりを、パクパク期からはさばが食べられるようになります。
意識して食べさせたい!DHAたっぷりリスト
【ゴックン期~(5~6ヶ月)】まだいは、赤ちゃんに最初に食べさせる魚におすすめ。味わいが淡泊でクセもなく低脂肪。天然より養殖のほうがDHAは多い。しらすは塩分が多いので、必ず塩抜きしてから調理して。
【モグモグ期~(7~8ヶ月)】鮭などの赤身の魚は、DHAや鉄分が豊富なので、成長期には積極的にとり入れたい食材。特にまぐろ(とろ)は、DHAが豊富。ただし、脂肪が多いので離乳食期は赤身を選んで。
【カミカミ期~(9~11ヶ月)】DHAが含まれ、カミカミ期以降から積極的にとりたい魚。ぶりは脂肪分が多いので、ゆでるなどして脂肪を落として。まだらは、淡泊で食べやすいがDHA含有量はやや少なめ。
【パクパク期(1歳~1歳6ヶ月)】DHAやEPAなどが豊富なさばは、青背魚の中でも特に脂肪分が多く傷みやすいので、新鮮なものを手早く調理して与えるようにしましょう。