多くのパパやママを悩ませる「イヤイヤ期」。「あれもイヤ」「これもイヤ」とすべてを拒否して癇癪を起こすわが子に対し、「泣きたいのはこっちだよ」「ほとほと疲れた」と愚痴りたくもなりますよね。
では、そもそもなぜイヤイヤ期というものがあるのでしょう?その理由や、いつまで続くのかなど、イヤイヤ期のメカニズムを知ると、少しは気持ちがラクになるかもしれません。小児科医の渡辺とよ子先生にうかがいました。
イヤイヤ期とは?始まりはいつ頃?
個人差があり、早い子・遅い子、あるいは子供によってはイヤイヤ期がない子もいますが、一般的には1歳半頃から。手のかかる赤ちゃん期を終えてひと安心……と思ったころにやってくるのが「第1次反抗期」と呼ばれるイヤイヤ期です。”魔の2歳児”とも言われます。
それまではできなかった「あんよ」と「おしゃべり」を獲得し、脳が劇的に発達するのがこの時期。同時に、子供の心のある重要な部分も大きく育ちます。それは「自我」です。
赤ちゃんは、自分と他人の区別がついていません。自分の顔を鏡で見ても、自分だとは思いません。でも1才半ごろから「ボクは、ボク。ママとは違う」ということを「発見」します。自我の目覚めです。
自我が目覚めると、親の言いなりになることを拒否することが増え、「ジブンで!」にこだわります。運動機能が高まるので、自分でできる!という達成感も(まれに)感じます。
とはいえ、状況把握力はほぼゼロ。大人の「○×△だからダメよ」は理解できません。言語能力もまだ低いため、赤ちゃん時代と同じく、泣くことで応戦するしかありません。まさに大混乱期なのです。
イヤイヤ期の子供の特徴は?
イヤイヤ期の子供を、6つのタイプに分けてみました。
①「ブンデ」タイプ
食べることも着替えも、自分でやりたい!でもまだできないことが多くてジレンマ。親が手助けすれば「(ジ)ブンデ!」と、さらに気持ちが爆発!イヤイヤ期の基本形です。
➁「バイオレンス」タイプ
気持ちがうまく言葉にできない分、物を投げる、叩くなど、手や足で自己主張するタイプ。激しく暴れて抱っこすらできないことも。ひっかき防止に、せめて爪だけはこまめに切っておきたいものです。
③「全否定」タイプ
「ママと寝る?」「イヤッ!」、「パパと寝る?」「イヤッ!」、「ひとりで寝る?」「イヤッ!」、「じゃあもう寝ない?」「イヤッ!」。提案されたものはことごとくイヤなのがこのタイプ。
④「逃亡者」タイプ
お店で、駅で、公園で。手を離したら最後、ハッと気づくともういない! 「ここにいるのがイヤ」というよりも、好奇心のおもむくままに突進。いちばん目が離せないタイプです。
⑤「乗車拒否」タイプ
ベビーカーやチャイルドシートにすわらせようものなら、体をのけぞらせて拒否。スムーズに乗れるようになったら、今度はシートベルトを自分でつけたいと大騒ぎする子も多いです。
⑥「この世の終わり」タイプ
ひとたびイヤなことがあると、全身全霊で泣き叫びます。何も言わずに泣くだけの子もいれば、たくさんの言葉で訴えながら泣きじゃくる子も。親のほうは大音量に疲労困憊。
この時期の子供は、激しい自己主張や感情表現をしながら、少しずつ自分と他人との距離感や、社会的に許される範囲はどこまでなのかを学んでいます。時期がくれば、つきものが落ちたようにおだやかになる子も多いもの。
問答無用でやめさせたり、厳しく叱りつけたりすると、感情コントロールができずにむしろ悪化する可能性があります。うまくいなしながら、乗り切っていきましょう。
イヤイヤ期の子供との接し方は?
では具体的にどんなふうに接すればいいのか、イヤイヤ期の乗り切り方を場面別にご紹介します。
「自分でやる」と言ってきかない時は…
イヤイヤ期は、「自分で」を支える時期だと覚悟を決めましょう。「できないのにやりたがる」「やると言ったくせに、やらない」などには、寛容な気持ちで接して。
根本的に正そうとか、理屈を説いてきかせようとするのは時間のムダ。子供の反応を見ながら、「この方法がきくかも」「こう言うとますます怒るんだ」と対応を変えていって。
それは決して甘やかしでも、わがままを認めることでもありません。子供の自信を育てるための、家庭でしかできないサポートなのです。
【対処法1】根気よくつき合う時には本人が納得するまでつき合って。「もう1回」がしつこい場合は、「あと3回ね」と予告して終わりに。「必ずつき合わなくちゃ」と思わず、気持ちに余裕がある時に。
【対処法2】予告するタイムリミットがあるときは、15分前に「もうすぐおしまい」と伝え、その後は数分おきに「もう終わりだよ」と3回ほど予告。制限時間の5分前には「おしまいだよ」と撤収します。
【対処法3】失敗させるあえて親が手を出さずに失敗させることも必要です。子供は「できないけど、やりたい。どうしよう」と考えるようになります。がんばったことはほめて、次の挑戦を。
【対処法4】仕上げをやらせるさりげなくヘルプを。たとえばボタンはママがボタン穴を広げて後ろから差し込み、子供に引っぱらせます。1割しか自分でできなくても「できたね!」とほめてあげて。
【対処法5】一緒に練習する「やりたい!」をぶっつけ本番でやらせると混乱のもとなので、ママに気持ちの余裕がある時に一緒に練習タイムを持ちましょう。スパルタではなく、楽しい雰囲気で。
思い通りにならず癇癪を起こしたら…
選択肢の中から選ばせ「それはステキね!」人前で癇癪を起こした時、どなってやめさせようとしないこと。親の怒りは周囲にとっても迷惑。まずは「ご迷惑をおかけします」とあやまり、子供への対応はそのあとで。
癇癪を起こす子の親は、予防線を張っておくことが必要です。完全に子供まかせにするのでも、抑えつけるのでもなく、親がある程度決めた中から「どれにしようか?」と決めさせましょう。子供が選んだら、「ママもこれがいいと思っていたよ!」と言えば満足します。
もしも癇癪が始まったら、気持ちを代弁してあげることが大事。「やりたかったよね」「イヤだったね」と言ってあげると、子どもは100回言おうと思ったその言葉をのみ込むことができ、ごちゃごちゃになった気持ちが整理されるのです。
そして少しずつですが、親の言ってくれた言葉をまねながら、自分の思いを伝えられるようになってきます。
やんちゃ過ぎて危ない場合は…
やる前にストップ。やったらきっぱりダメ!2歳前後の特に男の子は、無茶な行動や無意味な動きの連続です。油断すると、命にかかわるようなケガをするかもしれません。
危険なこと、人に迷惑をかけることは、その瞬間に体を張って止めましょう。あれこれ理由を説明するより、「絶対にダメ!」と短くきっぱり言うほうが伝わります。
ただし、高いところに登った時に「危ない!」などと騒いでしまうのはダメな対応。集中力が切れて、かえってケガをしやすくなります。抱きかかえておろすか、いつでも助けられるようにしながら自分でおりてくるのを冷静に見守りましょう。
また、非常に危険なことは、やる前に「ここで走るのはダメ」などと言い聞かせて。
公共の場で騒いだら…
気分転換グッズは必携!社会のルールも教え始めて2~3歳の子の自制心は長続きしません。公共の場では、気分転換のおもちゃや絵本が必須です。社会のルールも教えたいものですが、電車に長時間乗るなどは子供が望んだことではなく、大人の都合です。
親は「ちゃんとしなさい!」ではなく、「電車では大きな声を出さないでくれる?」と「お願い」しましょう。やってくれたら「ありがとう」です。
ただし、こうした「お願い」は、それまで家庭内にルールがなく、好き放題にやらせているとうまくいきません。ふだんから誰かを思いやって自制する体験を少しずつ積ませましょう。
3歳になるとそろそろイヤイヤ期は卒業に!
3歳になると言葉の数がグンと増え、ある程度大人と会話できるようになります。意思が通じやすくなるため、2歳代の「なんでもイヤイヤ」は影をひそめます。一方で「これは絶対にイヤ!」という自己主張がより強くなることもあります。
それでも、「3歳になったらずいぶんラクになった」と感じるママが多いようです。実はこの「ラクになった」は、親子関係の基礎工事が終了したサイン。専門用語でいうところの「愛着関係」の完成です。
愛着関係とは、「この人は自分を大事にしてくれる」「何があっても守ってくれる」という揺るぎない信頼関係です。人は親子の愛着関係を土台にして他者とかかわっていくので、ここが不安定だと、人を信じたり受け入れたりするのがむずかしい大人になることがあります。
3歳までのこの時期は、子育ての中で最も大変な時期のひとつ。でも、「大変な時期」こそ、「大切な時期」なのです。
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