子どもの身長について、「パパは背が高いから、きっとこの子も…」「ママに似て小柄になりそう」なんて話をした経験、ありませんか?実際、その子の身長を決める最大要因は遺伝です。ただし、育っていく過程での生活習慣も、背の高さに少なからず影響を与えるのだとか。男の子のパパ&ママの中には気になる人も多いようです。
では、どうすればわが子の身長を少しでも伸ばすことができるのでしょうか。周産期・新生児医療の第一人者でもある渡辺とよ子先生(東京都立墨東病院)にうかがいました。
身長はさまざまな作用が複雑にからんで伸びる
背が伸びるというのは、「骨が伸びる」ということ。子どもの腕や足の骨の先端は軟骨になっており、ここが伸びる部分。大人の骨に軟骨はありません。
骨は成長ホルモンが分泌されることで伸びますが、骨の材料になるたんぱく質などの栄養素や、運動による刺激も必要です。身長は、体内のさまざまな作用が複雑にからみ合って伸びていくのです。
高身長の両親から生まれた子どもは高身長になるケースが多いなど、身長に遺伝の要素は無視できません。ただし、環境が与える影響も大きいのです。
下の式にあるように、子どもの最終身長は、遺伝によってある程度予測できます。そこに加わる環境要因には、食事、睡眠、運動、家庭環境などがあります。この、環境要因をより「背が伸びやすい」ものにすることで、+αの部分を増やすことができるのです。
男の子の最終身長予測式
(父の身長+<母の身長+13>)÷2+α「÷2」までの部分が遺伝、「+α」の部分が生活環境で決まります。上記の式に当てはめると…
●父180㎝ 母160㎝なら176.5㎝ +α
●父170㎝ 母155㎝なら169㎝ +α
●父165㎝ 母148㎝なら163㎝ +α
がおおよその目安となります。
子ども時代の生活環境がカギ
背が伸びるのは子ども時代だけです。男の子の子ども時代終わりのサインは、声変わり。しっかり低い声が出てのどボトケが固まったら、体は成熟したと考えられます。
身長が最も伸びるのは成熟一歩手前の時期。陰毛がチラホラ生え始めるころに一気に伸びますが、この時期の伸びにはあまり個人差がありません。身長を決めるのは、思春期に入る前にどれだけ伸びたか。子ども時代に生活環境を整え、思春期以前にできるだけ伸ばすことが、結果的に身長を高くします。
具体的には、骨が伸びるための成長ホルモンの分泌を促すため、0~6歳に①適切な栄養、➁適度な運動、③良質の睡眠をとることが重要です。それぞれに詳しく解説しましょう。
Point1 適切な栄養をとる
背を伸ばすのに大切な栄養素というと、骨を丈夫にする役割を果たす、カルシウムを思い浮かべる人が多いかもしれません。もちろん、カルシウムも大切ですが、最も重要な栄養素は骨や肉など体の組織の材料になるたんぱく質です。ビルにたとえると、たんぱく質は鉄筋、カルシウムはそれを補強するコンクリートのような存在です。
たんぱく質は肉や魚に多く含まれていますが、できるだけ低脂肪のものを。貯蔵がきかないので、毎日摂取することが大切です。
5歳児の1日にとるべき食事の目安量
●穀類→350 〜400g(ごはん茶わん8分目1.5 杯+パン6枚切り1枚+うどん2/3 玉)
●肉→40~50g(薄切り2~3枚)
●魚→50g(切り身2/3切れ)
●大豆・大豆製品→40~50g(納豆小1パック弱、豆腐1/6 丁)
●卵→50g(中1個)
●緑黄色野菜→50~70g
●淡色野菜→80~100g
●いも類→70g(じゃがいも2/3個)
●果物→150~200g(りんご1/4 個+バナナ1/2 本+果汁100%ジュースコップ半分)
●きのこ→20~30g(しいたけ1個)
●海藻類→10~20g(乾燥カットわかめ1g)
●牛乳・乳製品→400g(牛乳コップ1.5 杯+ヨーグルト小1個+チーズ1かけ)
●油脂類→20g
●調味料→適宜
Point2 程度な運動をする
バレーボールやバスケットボールをやると背が伸びる、などといわれることがあります。でも、「これをやれば背が伸びる」という特別な競技はありません。運動が大切だからと消耗の激しい過度な運動や、好きでもないスポーツを無理にやることは、むしろ身長の伸びを妨げます。
心地よく疲れておなかがすき、夜ぐっすり眠れるような適度な運動を心がけましょう。激しい練習に耐えるような運動は、体ができ上がった高校生になってからで十分です。
運動をすると骨にたて方向の圧力がかかり、それが刺激になって成長を促します。ダンスやミニサッカーなど、子どもの好きな運動はおすすめですが、特別なことはしなくてもいいのです。鬼ごっこやキャッチボールなど、遊びの中でも体を動かすことは十分できます。
Point3 良質の睡眠をとる
「寝る子は育つ」は本当です。身長を伸ばす成長ホルモンは、入眠直後の深い眠りのときに最も多く分泌されます。起きているときにもこのホルモンは分泌されますが、眠っているときのほうがよりたくさん分泌されるのです。
成長のために必要な睡眠時間には個人差がありますが、幼児期~思春期以前の子どもは、10時間は睡眠時間を確保したいものです。
成長ホルモンの分泌を促すのは、睡眠時間の長さだけではありません。眠りの質も大きいのです。たとえば、寝る前に夜食をとると、成長ホルモンの分泌が減ってしまいます。
食事は就寝2時間前には終わらせておきたいもの。就寝前にテレビやゲームに熱中するのもよくありません。強い光刺激を浴びることで、深い眠りにつくことができにくくなってしまうので注意して。
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