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2023.02.20

成長・発育

「ブランケット症候群」って?毛布やぬいぐるみを離さないのはなぜ?【公認心理師監修】

子どもがお気に入りの毛布やぬいぐるみを持ち歩いたり、寝るときに抱きしめる姿はとてもかわいいもの。しかし、ボロボロになっても持ち歩いていたり、年齢が大きくなっても大事にしていたりすると「うちの子大丈夫かしら?」と心配になる親も多いのではないでしょうか? 

もしかしたらその状態は「ブランケット症候群」かもしれません。ブランケット症候群はどんなものなのか。特徴や対処法を、児童心理専門公認心理師の佐藤めぐみさんに聞いてみました。

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ブランケット症候群って何?

ブランケット症候群とは、「特定のアイテム(毛布やぬいぐるみなど)を持つことで、精神的な安心感を保っている状態」のことを言います。

「ライナスの毛布」や「安心毛布」という言葉を聞いたことはないでしょうか。スヌーピーの漫画に登場するライナス君はいつも水色の毛布を持っていて、彼はお気に入りのアイテムを肌身離さず持ち歩くことで安心感を得ています。

ブランケット症候群はこれと同じ状態です。この特定のアイテムは、心理学では「移行対象」と言います。ブランケット症候群は生後5~6ヶ月以降の赤ちゃんから大人まで、年齢を問わずに見られますが、中でも幼児期によく見られます。

ブランケット症候群の原因は?

どうしてブランケット症候群になるのか?ひと言で言うなら「子どもがママから自立をしたいけれど、不安になってしまう。そのときの橋渡し役がブランケットなどの移行対象」です。

小さい子どもにとって、母親など、自分と一体だったような人から離れるのは不安なことです。ブランケットやぬいぐるみなどの移行対象は、その不安をやわらげてくれる役割を持っているのです。

イギリスの小児科医で精神分析医のD・W・ウィニコット博士は、子どもが母親に依存している状態から徐々に脱却していくプロセスを次の3段階に分けて理論化しています。

新生児から生後6ヶ月まで

この時期を絶対的依存期と言います。名前の通り、母親など養育者に絶対的に依存している段階で、この時期の赤ちゃんは寝返りもうてないため、母親に来てもらわないと動くことができません。

生後6ヶ月から1歳まで

移行期。移行期は依存を徐々にゆるめていく段階です。ハイハイやあんよができるようになり、物理的に母親から離れることが出てきます。好奇心もあり自立したいけれど、母親から離れるのは不安。そんなときの不安緩衝材として、毛布やぬいぐるみなどの移行対象を用いることがあります。

1歳から3歳まで

相対的依存期。歩いたり走ったりができるようになり、活動が活発になります。気持ちが安定しているときは公園などで友達と遊びますが、不安になると視覚的に母親を確認します。毛布やぬいぐるみに頼ってはいるものの、移行期に比べると依存は薄れていきます。

愛情不足が関係してる?病気の心配は?

ボロボロになっても毛布やぬいぐるみを手放さなかったり、寝るときも持ったりしている様子を見ると、「もしかして親の愛情不足なんじゃないか」とか、発達障害などの心配をしてしまう親御さんもいるかもしれません。

しかし、上記のようにブランケット症候群の原因がわかると、成長にともなって必然的に生まれるものであることがわかります。

「症候群」という名前がついているので病気なのかと心配になるかもしれませんが、病気ではありません。ブランケット症候群の背景には、幼い子どもの発達過程で見られる、正常な気持ちの変化があります。むしろ、母親とのほどよい関係を前提に起こるともいわれています。

厳密にいえば、愛情不足の場合でもブランケット症候群の症状が見られることがあります。しかし、もしそうであれば、他にも親を困らせる行動を頻繁にする、注意をひくような行動をするなど別の問題も出てきます。お気に入りのぬいぐるみや毛布を手放さないだけであれば、まったく心配ありません。

ブランケット症候群はいつ起こる?いつまで続く?

ブランケット症候群は生後5~6ヶ月以降の赤ちゃんから大人まで、年齢を問わずに見られます。

大半は、2~3歳のころが一般的で、5歳ころまでになくなると言われますが、なかには小学生や中学生になっても移行対象をキープし続ける子もいます。「ちょっと心細いな、でも、親を頼りたくないな」というようなときには、棚から出して抱きしめたりすることもあるでしょう。

大人になっても移行対象のぬいぐるみを持ち続けている人も珍しくありません。部屋のどこかに飾っておいて、時おり見ては気持ちをほっこりさせたり、小さい頃の思い出に浸ったり……。

これらは自分をマネジメントするためのひとつの手段といえます。ぬいぐるみを使って自分で自分をなだめて、感情を整理しようとしているわけです。これは人間として大切なスキルです。

余談ですが、私の娘が小学校時代を過ごしたオランダでは、泊まりで出かけるキャンプの持ち物に「お気に入りのぬいぐるみ」がありました。小学生になったからといって無理に手放す必要はないというスタンスです。

男の子よりも女の子のほうが多いって本当?

3歳くらいまでは性差はありませんが、それ以降になると男の子はぬいぐるみで遊ばなくなることが多くなります。

親が無意識に男の子らしいミニカーや戦隊もののおもちゃを与えることもありますし、その子自身がぬいぐるみよりもそういったおもちゃを好むこともあるかもしれません。そのため、ぬいぐるみから卒業するのが男の子のほうが早い傾向にあるのです。

女の子はぬいぐるみを使ったおままごとなどの遊びをすることが多いですし、ぬいぐるみとの付き合いが深いため、移行対象になりやすいという気がします。

ブランケット症候群の対処法は?

これまでお話してきたように、ブランケット症候群は病気ではありません。むしろ成長過程で起こる正常な症状なので、過度に心配したり、移行対象を無理やり取り上げたりせずに自然にまかせるのが一番です。のんびりと見守ってあげましょう。

お気に入りのアイテムがあるから安心して眠れるなど、メリットにも目を向けてうまく活用してほしいと思います。ぬいぐるみや毛布をいつも口に入れているので衛生面が心配、という場合は、同じアイテムを洗い替えとして2個用意しておくのもいいでしょう。

➤➤新生児や赤ちゃんの指しゃぶりはいつから? やめさせる方法は?【医師監修】

取材・文/佐藤真紀

【監修】 佐藤 めぐみ 公認心理師

公認心理師|育児相談室・ポジカフェを運営。専門は0~10歳の子どもを持つ家庭向けの行動改善プログラム、育児ストレスのカウンセリング。英・レスター大学大学院修士号、オランダ心理学会認定心理士。学びの場『ポジ育ラボ』ではスマホで受講できる子育て心理学講座やママの心をケアするメルマガ「ポジ育クラブ」を配信中。➤ 育児相談室ポジカフェ 

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