赤ちゃんは、すやすや眠っているイメージがありますね。でも、産院から退院してきたら、なかなか寝てくれず、「こんなはずじゃなかった!」というママやパパも少なくありません。
そこで、この記事では細部小児科クリニックの細部千晴先生に取材。新生児期の赤ちゃんが寝ない理由や、寝かしつけのコツなどについてまとめました。
新生児赤ちゃんの睡眠ペースって?
生後4週間までの新生児期の赤ちゃんは、1日のほとんどを寝て過ごします。でも、大人のように7~8時間続けて寝るということはなく、短いサイクルで寝たり、起きたりを繰り返すのが特徴です。
授乳や入浴後に眠ったと思ってもすぐに起きてしまったり、寝かしつけたと思って布団やベッドに移動させたとたんに泣き出してしまったりと、サイクルも一定ではありません。新生児期から夜間にぐっすり寝てくれる、頻繁に起きて泣くなど、赤ちゃんによって個人差もあります。
また、この時期の睡眠リズムには昼間と夜中の区別もないので、ママやパパが寝ているときに泣いて起こされるということもしょっちゅうです。産後でまだ体調が整っていない時期に何度も夜中に起こされて、睡眠不足でイライラしたり、ストレスを感じてしまうママも多いでしょう。
「ずっとこのままだったらどうしよう」と思うかもしれませんが、月齢が進むにつれて、だんだんと昼夜の区別がつくようになってまとまって寝てくれるようになるので、あまり心配しすぎないで。
なかなか寝てくれない原因は?
新生児期の赤ちゃんは、おなかの中から出てきたばかりで、まだいろいろな機能が未熟なので、以下のようなさまざまな理由ですぐに起きてしまったり、なかなか寝なかったりします。
うまく母乳やミルクを飲めない
新生児期の赤ちゃんは、母乳やミルクを飲むことにまだ慣れていないため、上手に飲むことができず、1回の授乳で飲める量がそれほど多くありません。加えて、母乳の場合、赤ちゃんに吸われることによってたくさん出るようになるので、この時期にはママの母乳もまだ多く出ていないのです。
生後2~3ヶ月ごろになって上手に飲めるようになると、授乳のリズムが整ってきます。それとともに睡眠リズムも整って、朝まで寝てくれるようになる赤ちゃんもいますが、個人差があるため、まだ夜中に起きるという赤ちゃんもいます。
授乳後のゲップがうまく出なかった
赤ちゃんは、母乳やミルクを飲むときに空気も一緒に飲み込んでしまいます。赤ちゃんの胃は大人のような形ではなく、とっくりのような形状をしているため、授乳後にそのまま寝かせると空気と一緒に飲んだ母乳やミルクを吐き戻してしまうことがあります。
そのため、授乳後には赤ちゃんを縦抱きにして背中をさすったり、トントンと背中をやさしくたたいてゲップをさせてあげることが必要です。それでもうまく出なかったような場合には、気持ち悪さから泣いて起きてしまうことがあります。
おむつが汚れている
大人は、ある程度おしっこを膀胱にためておくことができるので、トイレに行くまで我慢することができます。ところが、乳児期までの赤ちゃんは、まだおしっこを膀胱にたくさんためておけません。少したまると出てしまうため、頻繁におむつ替えが必要になります。
起きているときにおしっこをするということもできないため、寝ている間におしっこをしておむつが濡れると、その不快な感覚で泣いて起きてしまいます。
暑い、または寒い
新生児期の赤ちゃんは体温調節も上手ではありません。着ている衣服の枚数が多くて汗をかいている、冷房の風が当たっている、寒い時期に布団から足が出ているなど、暑さや寒さなどで寝られないことも少なくありません。
赤ちゃんは体温調節が未熟なため、衣服は大人より1枚多めが基本ですが、夏は肌着1枚や肌着+ロンパースでもOKです。
そのほか、部屋が明るすぎる、ムシムシして湿度が高いなども、赤ちゃんが寝られない要因になります。
肌着などの状態が気持ち悪い
赤ちゃん用の衣類は、肌に刺激をあたえないように縫い合わせが外側になるようにできていますが、暑い時期に肌着だけで過ごしていて布地が重なった部分がどこかに当たっているなど、不快な状態が起こったために寝られないこともあります。
体のどこかが痛い、かゆいなど体調がよくない
うんちが出なくておなかが痛い、体がかゆいなども、赤ちゃんにとっては不快なこと。寝られなかったり、寝ていても起きて泣き出したりします。
日中に強い刺激を受けて興奮している
じいじやばあば、ママやパパの友達や親せきが訪問してきたなど、いつもと様子が違う一日を過ごしたりすると、それが刺激となって赤ちゃんが寝つけなかったり、寝ている途中で目覚めてしまったりすることがあります。
上手に寝かしつけるにはどうしたら?
赤ちゃんのためにも、ママやパパのためにも、赤ちゃんには心地よく眠りについてほしいもの。赤ちゃんが泣きやまないのは不快な状態があるためなので、それを取り除いてあげることが大切です。
おなかが空いていないか、おむつが汚れていないか、衣服を着せすぎていないかなど、要因を一つ一つ確認してみましょう。
眠りやすい室内環境を整えることも必要です。以下のポイントに沿って、赤ちゃんにとって快適な寝室にしてあげてください。
快適な寝室にするポイント
●室温は、夏は26~28度、冬は20~23度を目安に。
●赤ちゃんの寝ている場所に直接エアコンの風や日光が当たらないように、寝る場所を考えましょう。
●布団は、夏はタオルケットやバスタオル1枚、春と秋はタオルケットやバスタオル+かけ布団、冬はタオルケットやバスタオル+毛布+かけ布団を目安に。
まだ昼夜の区別がない新生児期の赤ちゃんが、だんだんと夜寝るようにするためには、生活リズムをつけるようにすることも欠かせません。
朝は寝室のカーテンを開けて、日光を入れましょう。昼間は赤ちゃんが寝ているときも部屋を明るいままにし、夜になったら照明を薄暗くします。
夜中の授乳の際は部屋の照明を明るくせず、常夜灯もしくはベッドサイドの照明などをつけるにとどめてください。部屋を明るくすると、刺激になって、寝つけなくなる可能性があります。
放っておいても大丈夫?
赤ちゃんが寝られない要因を確認して取り除いたり、寝室の環境を整えたりしてもなかなか寝ない場合は、そのまま寝かせておいて大丈夫です。
ただし、赤ちゃんが寝ている周りに口や鼻をふさぐ危険があるものはないか、ベビーベッドの落下防止柵がきちんと閉まっているかなどのチェックを必ず行ってください。軟らかい布団やベッド、添い乳などは窒息の危険があります。布団やベッドは硬いものを選び、添い乳はしないようにしましょう。
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新生児期の赤ちゃんは、寝たり起きたりを繰り返しています。なかなか寝てくれなかったり、夜中に何度も起こされたりで、ママやパパはストレスが溜まりますが、成長とともにだんだんとまとめて寝てくれるようになります。
赤ちゃんが不快に思うことを取り除き、危険がないかどうか確認したら放っておいてもOKなので、頑張りすぎないで。
悩んだら小児科専門医や地域の保健師さんに相談を。一人で抱え込まないためにも、子育てアプリを活用して、外の世界とつながっておくのもおすすめです。
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