わが子には、英語力を身につけて世界で活躍できる人になってほしい―。そう願うのが親心。2020年度から全国の小学校で英語教育が必修となり、英語の重要性がますます高まる中、その思いを強くしているパパやママも少なくないと思います。
でも、小さいころから英会話教室に通わせたり、海外留学をさせるとなると費用もかさみます。お金をかけずに英語力を養うことはできないのでしょうか?両親とも日本人だと、海外に行かなきゃバイリンガルにはなれないの?
いえいえ、そんなことはありません。ここでは、書籍『おうちでほぼバイリンガルの育て方』より、地方の公立高校から塾に通うことなく、ハーバード大学に現役合格したバイオリニスト・廣津留すみれさんの母、廣津留真理さんが実践したメソッドを連載でご紹介します!
地球は狭いと感じられるかどうか
娘のすみれはいま、ニューヨークで仕事をしています。日米間と距離は離れていても、メッセージやビデオコール(テレビ電話)で瞬時に連絡ができます。
私が若かった昭和時代の留学の意義は「外から日本を見て異文化理解を深め、日本にない海外のよいものを取り入れる」でした。しかし、交通の発達・インターネットの普及などで、地球はどんどん狭くなりました。
いまの留学は「未来に備えて自分を限りなく進化させる、自分と社会が直面する問題の解決を探る」、このように進化しました。自分の住む地域の束縛から解放されて、自由に場所を選び、学べる時代になったのです。
私は現在、大分を拠点に「ひろつる式ディリーゴ ブルーマーブル英語教室」や、サマースクール「Summer in JAPAN」を主宰しており、生徒さんも講師陣も世界中から集います。
娘を育てていたときも、世界のどこでも好きなところで学びなさい、と伝えていました。そのためには、やはり英語が必須なのです。
将来、選択肢が多いほうがいいと考えて英語を教えることに
私が娘に英語を教えようと思ったのは、将来、選択肢を多く持てるようにと考えたからです。日本語と英語の二つを母国語のように使いこなせたら、その先の選択肢が広がります。世界中で共通言語のように使われている英語ができれば、そこから先、何かをしようとしたときに、困ることはありません。
とはいえ、初めての育児でしたので、手探りの状態から始まりました。娘が生まれてから、育児書や教育について書かれている本を読みあさり、いいなと思うことを頭においては、次の本を読み、合計で200冊くらいは読んだでしょうか。
0歳から英語と日本語で話しかけ、1歳からは英単語カードを使いました。手描きのイラストの裏に単語を書いて、イラストを見て単語を覚えるようにしたのです。凝り性なので、作りだしたら止まらなくて、夜なべをして作ったことも(笑)。
➤➤単語力がどんどんアップする「イラスト入りの英単語カード」とは?ちょっと失敗したこともあります。トリリンガルだともっといいだろうと思って、フランス語のカードも作り始めたのですが、英語もフランス語もだと、作るのがあまりにたいへんだったので挫折してしまいました。
日本語で知識をふやし、体験を積むことも必要
私が代表をしている英語教室で「家でどんな勉強をさせたらいいですか?」という質問をよく受けます。
私はその答えの一つとして、「言葉を覚えるときに、知らないこと、体験したことがないことは大人でも覚えにくいもの。英語も言葉なので、子どもが母国語で知識をふやし、体験を積むサポートをすることが大事」とお伝えしています。
子どもが母国語で教養を身につけられるように、読書やスポーツや芸術などを通してさまざまなことを体験させることが必要だと思います。
わが家は、子どもが小さいころは近所の図書館で、絵本、風景や国宝などの写真集、世界の料理レシピ、生け花などのビジュアル本をよく見せていました。また、スポーツとまではいきませんが、歩けるようになると、毎日、かなりの距離を散歩したので体力がつきました。
散歩では、いろいろなものを見たり体験したりすることもできます。芸術では、クラシックをたくさん聞き、バイオリンとピアノに夢中になりました。こうやって知識や経験がふえていくと同時に、英語の語彙もどんどんふやしていくことができたのです。
それと同時に心がけていたことがいくつかあります。子どもが自己肯定感を高めることができるように、ふだんの生活から、「〇〇してはだめ」などと否定的な言葉は極力使わずに肯定文に変換して伝えること。英語だけでなく、何事にも自信を持ってとり組む人間になってもらうのが優先です。
「〇〇してはだめ」ではなく、「〇〇よりも△△のほうが楽しそう!」と代替案を提示すると、固執することもなく、楽しんで次のことにとり組みました。自己肯定感が高まると「自分はやればできる!」と次のことにチャレンジしていく意欲が出てきます。
また、英語を「勉強」的にとり組ませ、なかば強制的に「さあ覚えなさい、やりなさい」などと言うこともしませんでした。遊びの延長のように、英語の絵本や英語のマンガの動画をいっしょに見て楽しみました。子どもがやる気や興味を失わないようにすることをたいせつにしたいと思っていたのです。
もう一つ、子どもに英語を教えるときに使っていた手があります。「英語を使うのが世間ではふつうなんだ」、と思わせるくふうをすることです。これは特に小さいときに有効です。
たとえば、ちょっとしたときに、なにげなく英語で話しかけてみます。そのときは、いちいち日本語に訳したりしません。What color do youlike? と私が言って娘がまねをすると、私はI like pink!と答えます。これで娘はすぐに答え方がわかります。こうして、「ときどき英語で話すのがふつう」と思わせておくのです。
サポートするだけでどんどん力が伸びていく
イラスト入り単語カードの次のステップとして、センテンスカードや英語の絵本の「なぞり読み」を始めました。娘は、次から次へとクリアしていくのがゲーム感覚で楽しかったのだと思います。「早く次にいきたい、むずかしい英語の文章を読んでみたい」と意欲的にとり組むようになっていきました。
➤➤英語力向上に効果的な絵本の「なぞり読み」って?私はといえば、子どもの能力を信じ、楽しんでチャレンジできるようにサポートしただけです。自主的にやるようになると、あとは見守るだけで英語を習得したと言っても過言ではありません。
必要なものを用意し、ほめて抱きしめ、家族仲よくすることが私のサポート法。ほめることで自己肯定感が高まりますし、家族仲がいいと安心してものごとにとり組むことができます。自己肯定感を一生ものにすることができれば、将来、どんな場面でも、ポジティブに生きていけると思います。
廣津留さんのバイリンガル育児年表
●0歳日本語と英語で語りかけ
●1歳手作りのイラスト入りカードで英単語を覚える
イラストなしのカードで英語センテンスを覚える
英語の絵本を読み聞かせ
●2歳英語の絵本を(娘から私に)逆読み聞かせ
たくさん音読をする
●3歳16ページ以上の英語絵本を習慣的に読む
英検4 級合格
バイオリンを習い始める
●4歳英検3 級合格
●6歳小学校入学とともに英語で日記をつけ始める
●8歳英検準2 級合格
●12歳バイオリンに熱中 英検2 級合格
●13歳ますますバイオリンの練習に力を入れる
●16歳英検準1級合格
●17歳高2の3学期にハーバード受験決心、単語を猛勉強 英検1級合格
●18歳SAT 受験(TOEFL 受験)
アメリカのハーバード大学合格
●22歳ハーバード大学を首席で卒業
アメリカのジュリアード音楽院修士課程に合格
●24歳ジュリアード音楽院修士課程を首席で卒業
●現在音楽関連の会社を起業し、バイオリニストとしても活躍中
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ひろつるメソッドで子どもをバイリンガルに!0~2歳児に「英単語」を身につけさせる方法とは?廣津留真理さんMari Hirotsuru ●ひろつる式ディリーゴ ブルーマーブル英語教室代表、一般社団法人Summer in JAPAN(SIJ)代表理事・CEO、株式会社ディリーゴ代表取締役。大分県在住。早稲田大学卒。高いレベルの英語教育を最初から行う「ひろつるメソッド®」により、多数の生徒を英検1級・準1級合格に導く。ハーバード大生が講師のサマースクールを2013年より開催。著書に『ひろつるメソッド 子ども英語 Don Don English! 英検5 級対応 CD つき』(主婦の友社)など。『おうちでほぼバイリンガルの育て方』(Kindle版 1,287円 単行本 1,178円/主婦の友社/2019年12月刊)
日本でバイリンガルを育てた親4人の英語子育てを紹介。何から始めたらいいのかわからない人、英語が苦手な人…どんな人でもトライしやすいメソッドがたくさんです!