「もう無理」。自分の本音を出せたあるきっかけ
とはいえ、先生方から「困っていることはない?」と聞かれると、「特にありません」と答えてしまう自分がいました。迷惑をかけてはいけない、自分一人で頑張れるという、優等生的な思いが強かったのです。
ところがある日、園庭での遊びの時間が終わりになった時のこと。他の子は遊びを終えて片づけをしているのに、息子はただ一人、いつまでも遊び続けていました。何度声をかけても、頑なに動こうとしません。
声をかけ続けると、そのうちダンゴムシのように丸まってギャーギャーと泣き始めました。体は砂まみれ、顔は涙でぐしゃぐしゃ、なだめても抱っこしようとしても全力で拒否。
そんな息子の姿に、このまま一生言葉も話さず、ひっくり返って泣き続けるのかもしれないという不安が大きくなって…。気づくと私はしゃがみこんで息子と一緒に泣いていたのです。
すると、背中にふわっと、あたたかい手の感触がしました。そばにいた先生が、私の背中をさすってくれたのです。何も言わずに、ただ優しく。
それをきっかけに、何かがぷつんとはじけ、それまで心に押し込めていた言葉があふれ出てきました。「助けてください」と。
「助けてください。もう無理です。自分一人では抱えきれないんです」
不治の病でもないのにと頭の中ではわかっていても、どんなに本を読んでも救われなかったのは、「人に頼ることはできない」と決めつけ、孤独感に苛まれていたことが原因でした。
自分のことは自分で、頼れるのは私だけと、ひたすら自身に鞭を打ってきましたが、抱えきれない事実に気づかないまま限界を超えていたのでしょう。
その時、やっと自分の願いを言葉にして言えたのでした。
人に甘えちゃいけないと思ってきた私でしたが、助けてもらっていいんだと、自分に許すことが一番難しかったと思います。
もし、息子が障がいを抱えずに育っていたら、私は人生で何かあっても、ずっと助けを求められないままだったかもしれません。
このことをきっかけに、やっと先生と本音で話せるようになり、自然と心が和らいでいきました。
面談で気づく親の思い込みと期待
▲療育施設での様子先生との個別面談では、ズバリ核心を突かれることも多々ありました。
「お母さん(私)は、失敗させちゃいけないと先回りして動いてるよね。それを息子さんもわかって動いてるし、お膳立てされてるから、本人も何ができないかわからないんじゃないかな」。
失敗させたらいけないと先回りして手をかけることが、子どもへの愛情だと無意識に思っていたのでしょう。それが子どもの成長を妨げていたなんて、頭をハリセンでバチコーンと打たれるような衝撃を受けました。実際にハリセンで叩かれたことはないですが(汗)。
また、子どもの様子を見ていて「こんなこともできるようになったし、これから困らない気もするんです」と楽観的なことを言ったら、「そこまではまだ達してないかな」と言われたことも。
こうなったらいいなという期待から、できていると思い込む“親フィルター(私の造語)”をかけて判断しがちでしたが、客観的に見てアドバイスをしてくださる先生方のおかげで、大分冷静になれました。本当に感謝しています。
さて、そんな風に療育施設に通い続けて数ヶ月。ママたちの間でざわつく話が出てきました。それは「入園先をどうするか問題」。発達障がい児の保育園入園はなかなかスムーズにいかない現状をそこで知ることになるのです。
続きは次回で。
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「普通」っていったい何?障がいを持っている子は普通じゃないの?【息子が発達障がいと診断されて#3】※記載した情報は当時のものであり、自治体によって福祉サービスが異なる場合がございます。発達相談など地元の子育て支援に関する情報をご確認ください。
文/山田明日美
<整理収納アドバイザー。女の子と男の子の2児の母。自身の体験をもとに子育てや片付けに関するアイデアを中心に執筆中。>