単に勉強ができるだけの子を育てるのではなく、脳の働きを高めることで、人生をたくましく、賢く生き抜く力を育む「クボタメソッド」。京都大学名誉教授の久保田競先生と、”脳科学ばあちゃん“として一世を風靡した故・久保田カヨ子先生のご夫妻が確立した子育て法です。
今回はそんなクボタメソッドより、1~3歳の子の「言葉の育て方」をご紹介します。言葉の体験が豊かであるほど、脳は育つもの。親子の会話で子どもの理解力や記憶力を育んでいきましょう。
使える単語の数が1年の間に100倍に増える子も
1歳の誕生日には「パパ」「ママ」など2~3の単語しか使えなかった赤ちゃんも、2歳の誕生日ごろには約200~300の単語を使えることができるように。この時期は、言語能力・コミュニケーション能力が爆発的に伸びる時なのです。
とはいえ、すべての子が2歳で200~300の言葉を理解して使えるわけではありません。発する単語の数がもっと少ない子もいますし、正しい意味で使っていない子もいます。
言葉をどのように習得していくかは、生まれてから数年間の「言葉の体験」と大きなかかわりを持っています。
親は単語ではなく文章で子どもに語り掛けて
生まれたばかりの赤ちゃんでも、音を聞く「聴覚野」や、声を出す筋肉をつかさどる「運動野」は働いています。音は聞こえるし、声を出すこともできるのですが、言葉を理解し、使うことはできません。
言葉を理解する「感覚性言語野」と、言葉を発生させる「運動性言語野」が結びついていないからです。
この2つが発達し結び付くためには、人間の言葉を耳で聞き、それに対して「あー」「だー」などの反応をし、さらにだれかに「そうなのね」と反応してもらう体験が欠かせません。
人間の言葉を聞いたことがなく、話すこともない赤ちゃん時代を送ったとしたら、たとえ大人になっても言語を理解することはできないのです。
1~2歳の時にどれだけ言葉の触れ合いがあったかは、その後の知能の発達と大きなかかわりがあることがわかっています。この時期、親は「文章で話す(単語だけで話さない)」ことを意識してください。
子どもは物や行動には名前があること、特定の音には特定の意味があることを、言葉の体験の中で実感していかなければなりません。
そのために親は、ひとつの単語にどんな使われ方があり、どんなイメージで使われているのかを、形容詞や動詞を交えながら表現していく必要があるのです。
「言葉力」をつけるためのポイント5つ
子どもとの会話をする際には、以下の5つのポイントに注意しましょう。
1 単語だけではなく、その言葉の使われ方も教える
親は常に、子どもの「言葉の先生」であることを意識して。子どもがまだ単語しか話せなくても、親は単語だけではなく、2語以上の文章で話しかけましょう。子どもが聞き取れるか、意味がわかっているかは、この時期は重視しなくてもいいのです。
ボールという言葉を教える時には、投げたり転がしたりして、「ボールを転がすよ」「ボールが飛んできた」と教えます。子どもが犬を見て「犬」と言ったら、親は「大きな犬がいるね」と文章で言いなおします。
ママの言ったひと続きの言葉が、わずかながら記憶に残ります。そして「単語だけ」の時期を過ぎた時、それらの記憶をもとに爆発的に文章で話し始めることになるのです。
2 短いお話を毎日聞かせる
子どもには毎日、短いお話を聞かせてあげましょう。お話というと絵本を想像しますが、絵本は子どもが文字に興味を持ち、「読んで」と言ってきてからでも遅くはありません。
それよりも、親が作って聞かせてあげる短いお話のほうが、この時期の子にはちょうどいいのです。家にりんごがあったら、そのりんごを見せながらお話を考えてみてください。
「山の上のりんごの木に、おいしそうなりんごがたくさんなっていました。そのうちの一つのりんごが木からポトンと落ちて、コロコロコロ~と転がって、池にぽちゃん!」というように。梨でもどんぐりでも構いません。同じ話を少しだけ変えて、繰り返すのでいいのです。
絵本を読む時は親子で絵本を見ますが、お話を聞かせる時は子どもと目線を水平にして向き合い、反応を見ながら話しましょう。
3 ラジオやテレビは上手に活用
親が一日中話し続けることはできません。ラジオやテレビも活用しましょう。お気に入りの番組を親子で見たり、音楽に合わせて歌ったりするのは脳への良い刺激です。ただし、一日中つけっぱなしでダラダラ見せるのはいけません。
4 親の「聞く姿勢」が重要です
この時期は、子どもに話をさせることも重要。この時期の子は、伝えたいことを適した言葉で説明することができません。「ワァ、ワァ」と叫んだり、いきなり泣き出したりすることもあるでしょう。
それでも子どもは、何かを伝えよう、ママに何かしてもらおうと思って声を出しているのです。「何を言っているのかわからない」と見放すのはもってのほか。
しっかり子どもに話をさせたあと、前後の状況を考えて「ぶつけちゃったの?痛いの」などと聞いてあげてください。親に代弁してもらうことで、子どもは「こういう時はこう表現するんだ」と学ぶのです。
料理をしながら、考えごとをしながら片手間に聞くのではなく、手を止め、目線を合わせて聞き、わかりにくい言い方があったら正しい言葉や表現で言い換えるのが親の仕事。その繰り返しが言葉の獲得につながります。
5 話はゆっくりさせよう
早口でペラペラ話す子がいる一方、のんびり話す子もいます。話すのが遅いとイライラするかもしれませんが、子どもの話を途中でさえぎり、「これはこういうことなのね」と言ってしまうのは、よくありません。
子どもは「早く話さなくちゃ」とあせり、言葉を冷静に組み立てることができなくなってしまいます。ゆっくり思いを整理して話させることが大切です。一方、早口の子にはゆっくり話させる工夫を。
出典:『1~3才 思考力がぐんぐん育つ 子ども脳トレ』(久保田カヨ子:著/主婦の友社)
考える力を育む!「クボタメソッド」の育脳ドリル
子どもの脳の成長を促すために作られたドリル。解き進めるうちに、集中力、観察力が鍛えられ、考える力が身につきます。
『クボタメソッド できたね!ドリル① 考える力を育てる』(久保田競:監 京都幼児教室:監 リトルランド:編/主婦の友社)