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2023.04.10

妊娠出産体験談・インタビュー

娘が同性と付き合っているって事実、許してくれる?親へのカミングアウトREYAN編『虹色の未来』#7


母の顔を見たときからいつ言おうかとドキドキしてましたが、タイミングがわかりませんでした。そして映画の開始の待ち時間、私は唐突にそれを切り出しました。なんの映画を見たのか覚えていないのはきっと、かなり緊張していたからです。

「お母さん、私ね、女の子とも恋愛できるんだよね」

軽く言ったつもりでしたが、語尾は震えました。

ああ、言ってしまった。もう戻れない……。

ちらりと横目で母のリアクションをうかがいました。すると、さぞかし驚くと思っていたのに、母はあっけらかんとした様子でこう言うではありませんか。

「ああ、そうだと思ってた。もしかして、マンションにいた子と付き合ってるの?」

「……そうだよ。どうしてわかったの?」

じつは以前に母が上京してきたとき、母とUちゃんは顔を合わせたことがあったのです。約束の時間よりもだいぶ早く、朝方にマンションのチャイムが鳴り、寝ていた私たちは飛び起きました。

「……早いね。来るの夕方じゃなかったの?」

「そのつもりだったんだけど、予定が空いたから早く会いたくて」

Uちゃんは慌てて服を着て、ボサボサの髪のまま母とは一切目を合わせず、「こんにちはぁーー」と言って、サーッと家を出て行ったんですよ、ものすごいスピードで。寝起きだったし、突然の対面に頭が混乱していたんですね。

母は笑ってこう言いました。

「あのとき、彼女すっごい挙動不審だったもん。ずっと視線が床でさ。れいの誕生日を祝ってくれたって子も、そうだよね?」

家で恋愛の話をあまりしない私が、女の先輩から盛大に誕生日を祝ってもらったと、話したことがあったのです。

 葉山旅行、ディズニーのチケット、BVLGARIの名刺入れ、全部すごく嬉しかった。こんな豪華な誕生日祝いをしてくれる仲良しの先輩がいるんだよ、すごいでしょ、って。

その姿を見て、母は気づいていたようです。普通しませんよね、いくら仲がよくてもここまでは。

その後、別の話題を母が振ってきて、その話はそこで終わりました。映画を見てお茶をして、東京に帰る電車の中で母からのLINEが来ました。

『れい、あなたの幸せが一番だよ。あなたの人生なんだから、自分がしたいようにすればいい。私はあなたの味方だよ』

そのときの母が本当に私のことを理解してくれていたのかは不明ですが、私を否定せずに精一杯のエールを送ってくれたのだと思います。

なぜそう思ったかですか?カミングアウトした後に一度、「男性とは結婚したりしないの?」と聞かれたことがあったんです。その母の言葉に悪気はなかったはずです。

なんだかんだ母も、心から受け入れるまでは時間がかかったんだと思います。カミングアウトは受け入れる側にも相当の時間が必要ですから。

しばらくたったある日、いつも音沙汰のない義父から、突然こんなLINEが届きました。

『あなたはレズビアンですか?あなたは女性とも関係を持つのですか?』

血の気が引きました。どうして知っているんだろう。まさか、YouTubeのおすすめ動画で見てしまった?

もともと、義父に女の子が好きだとか、一切言うつもりはありませんでした。彼は祖国の文化と宗教的理由で、同性愛に理解がないのです。テレビで女装家を見ても眉をひそめるような人でした。

私は慌てて拙い英語を使って返信しました。

『私はパンセクシャルです。私は性別を問わずに人が好きです。男の人でも女の人でも、好きになる可能性があります』

頭の中が真っ白だったけど、とにかく母が私と義父の板挟みになって困らないよう、母に迷惑と心配をかけないよう、懸命に説明しました。うまく伝わったかわかりません。義父からは、こんなLINEが返ってきました。

『もしあなたが女性が好きだとしても私に言わないでくれ。知らないほうが幸せだ。それを聞くと私は幸せではない』

義父は悪くありません。私を傷つけようとしているわけでなく、宗教的に理解できないと思うのです。もちろん母の育て方も間違ってないし、私も悪くない。それこそ神様が選んだんじゃないのかなって思うこともある。

みんな考え方が違って当たり前だし、どっちが正解なんてことはない。私は私しかいないし、義父は義父でしかない。人それぞれの考え方を尊重したいです。

その後、しばらくたって帰省すると兄も祖母も、すでに知っていました。祖母からは「いつでも帰ってきなさい」と励ましてもらえました。
次ページ > 母への思い。そしてUちゃんとの対面

【文】 藤原 亜姫

2008年ケータイ小説史上、空前のアクセス数を誇った『インザクローゼット blog中毒』(河出書房新社)で作家デビュー。他著書には『夜が明けたら 蒼井そら』、『東京整形白書』などがある。人間の弱みや闇を独自の視点で痛快な物語に変える作家。

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