「出産をしたら母乳はちゃんと出るかな?」と不安に感じる妊婦さんも多いのではないでしょうか。
今回は、妊娠中に知っておきたい〈おっぱいマッサージ〉のやり方やその効果、注意点などについて、成城木下病院の助産師・宮木優梨絵さんと荒知美さんにお話を伺いました。
〈おっぱいマッサージ〉って?妊娠中からやらなくてはいけないの?
赤ちゃんが生まれたら、ママの体は母乳が出るよう変化しますが、いくつかの条件が揃わないと十分に母乳が出るようにはなりません。赤ちゃんの声を聞いたり、スキンシップをとったり、また、赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激によってホルモンが分泌され、より出るようになるのです。
母乳の出をよくするためには、妊娠中から赤ちゃんが吸いやすいおっぱいにしておくことが大切です。そこで大事になるのが「おっぱいマッサージ」です。
赤ちゃんが吸いやすいのは、十分なやわらかさや長さ、そして伸びのある乳首です。赤ちゃんの吸う力はみなさんが思っている以上に強く、しっかり準備をしておかないと乳首が傷ついたり、切れてしまったりすることがあります。
そうならないためにも、妊娠中からマッサージを行って、少しずつ乳首を鍛えておくことが重要です。
知っておこう!自分の〈乳頭タイプ〉
なかなか人の乳首をまじまじと見る機会もないので知られていませんが、耳の形がみなさん違うように、乳首の形もそれぞれ違います。
なかには、陥没や扁平など赤ちゃんが吸いづらいタイプの方もいらっしゃいますが、マッサージや乳頭吸引器などのアイテムの使用で改善が期待できます。
産後に慌てることがないよう、妊娠中に自分の乳首のタイプや必要なケアをチェックしておきましょう。
●普通●乳頭の長さと直径が0.8~1㎝ぐらいが、赤ちゃんにとって飲みやすいサイズ。比較的スムーズに母乳育児ができるでしょう。
●大きめ●乳頭の長さや直径が1.1㎝以上と大きめの場合は、乳輪部まで口に含みきれないことがあります。
●小さめ●乳頭の長さや直径が5~7㎜ぐらい。赤ちゃんが舌を絡めにくく、うまく吸いつけないことがあります。
●陥没●乳頭が乳輪の中に入り込んでいて吸いにくい。乳頭の皮膚が弱く、授乳で皮膚が切れてしまう心配も。マッサージやケアグッズでお手入れを心掛けて。
●扁平●乳頭がほとんど平らな状態。吸わせているうちに乳頭の形が変わってくることが多いので、あまり心配なし。
妊娠中からトライ!〈おっぱいマッサージ〉の方法
おっぱいマッサージは妊娠24週頃から始めることができます。ただし、マッサージ中におなかの張りや下腹部に痛みが出てきた場合はすぐに中止してください。
マッサージは入浴中や寝る前など、リラックスしているときに1日1回行うよう心がけてください。また、妊娠36週を過ぎたら、1日2回をおすすめしています。
乳房のマッサージ
血行がよくなり、分泌の準備が進みます。乳首からほぐしてもすぐに硬くなってしまうので、まず血流をよくする乳房から行うのが効果的です。肩こりの人は特に念入りにするとよいでしょう。
①両手をおっぱいの下で重ねる
②小指側で肋骨に触れながらすくい上げる
③息を吸いながら上げ、吐きながら下げる
④左右を5回ずつ行う
乳輪のマッサージ
乳輪をやわらかくし、赤ちゃんが吸いやすくする効果が期待できます。乳輪マッサージは粘膜が傷つきやすいので、皮膚を保護するためにオイルを使うことをおすすめします。当院(成城木下病院)ではカネソンのピアバーユを使って指導しています。
マッサージに使うオイルですが、産後は赤ちゃんの口に入るので、使っても大丈夫なものかどうかの確認が必要です。使えないオイルの場合は授乳の度にママが拭き取らないといけないため、その手間も考慮して、産前から赤ちゃんが口に入れても問題がない授乳用品を使用することをおすすめします。
◆マッサージ1◆①オイルを手に取る
②片手でおっぱいを支える
③きき手の人差し指と中指をそろえ、乳輪部に軽く圧を掛けながら輪状にくるくると3周を目安にマッサージする
※1・2・3のリズムで「の」の字を描くようにするのがポイントです。
◆マッサージ2◆①片手でおっぱいを支える
②きき手の親指と人差し指の高さをそろえ「C」の字を作る
③Cの字を乳輪に沿わせて置き、軽く自分の方へ押し込んで人差し指と親指を合わせるようにする。これを方向を変えて数回行う
乳首のマッサージ
乳首の伸びがよくなり、吸いやすくなります。乳首と乳輪部が「伸びた」と感じることがポイントです。
①きき手ではないほうの手でおっぱいを支える
②きき手の人差し指、中指、親指の3指を乳首のつけ根に置いて自分の方へ1㎝ほど押し込む
③指の腹を合わせるようにして、乳首をつまむ
④そのまま乳首を引っ張り、指を離す。3秒リズムで上下3回、左右3回を行う
開口マッサージ
36週以降に行います。母乳の出る穴をたくさん開けるとともに、乳首の伸びがよくなります。
①片手でおっぱいを支える
②きき手の親指・人差し指・中指の3指で、乳頭から乳輪を正面からつまむ
③親指の腹で、乳輪に「の」の字を描くように1・2・3のリズムで3回マッサージする
〈おっぱいマッサージ〉の注意点
●先生から切迫早産、切迫流産、おなかが張るとよくないと言われている方は、おっぱいマッサージをしないほうがよいでしょう。
●マッサージ中におなかの張りや下腹部の痛みが出た場合は、すぐに中止してください。
●清潔のため、また、おっぱいを傷つけないために、マッサージ開始時期からは爪は短く切り揃えましょう。つけ爪やネイル、マニキュアも取りましょう。
●妊娠中の乳頭は汚れがたまりやすいので、常に清潔に保ちましょう。入浴やシャワー時にやわらかいタオルやガーゼで汚れをやさしくふき取ります。母乳が固まって垢のように取りづらくなった場合は、無理にこすらず、オイルなどでふやかしてから取るように。
●おっぱいの血行を妨げないよう、妊娠中はワイヤーの入っているブラジャーは避け、乳房や乳輪部への圧迫をなくしましょう。おうちで過ごすときはブラジャーをしなくてもOKです。外出時は締めつけ感のないマタニティ用を。
産後のおっぱいのお手入れ&注意点について
産後2~3週間すると、赤ちゃんが上手に吸えるようになるため、もう授乳前のマッサージはいいかなと思ってしまうママもいます。
でも、油断してマッサージを怠ると、詰まって乳腺炎になってしまったり、乳首が切れてしまったり、思わぬトラブルに発展してしまうことも。産後もしっかりマッサージするようにしましょう。
『おっぱいマッサージ+リンパマッサージを』妊娠前から、かっさプレートを使って美容マッサージをしていた私。バストまわりもOKと聞いてから、脇の下から胸のほうへ流すリンパマッサージも取り入れました。きき手でない左手でも、右手同様に力が入れられるのでよかったです。そのおかげか、産後すぐから勢いよく母乳が出て、病院ではほめられました。(エミさん・30歳)
『妊娠中から乳首マッサージ。でも切れてしまい…』湯舟の中やおふろ上がりに馬油を塗って、乳首をいろいろな方向からつまんだり、伸ばしたりして、マッサージしました。乳首が多少強くなったとは思うし、産後に母乳も出たけど、結局切れて痛かったので、やってもやらなくてもあまり変わらなかったような気も。(あすかさん・28歳)
助産師からママへメッセージ
成城木下病院では、妊婦さんにプレッシャーがかからないよう、“できるときにできること”を指導するスタイルをとっています。まずは、自分の体を知ることから始めることが必要です。おっぱいマッサージについても、情報はご提供しますが、診察のときにきちんとやってきたかを確認することはしていません
おっぱいマッサージは歯を食いしばってするものではないので、自分が一番心地よく頑張れる方法でやりましょう。みなさんも不安なことや聞いてみたいことがあれば、ぜひご自身が通っている産院の助産師さんに相談してみてください。
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