ひとりで頑張らず、手助けを求められる人になろう
―――コミュニケーションが苦手な人はどうすればいいですか?
「コミュニケーションが得意な人と組めばいいんです。何でもすべて自分でできるようになる必要はありません。私も計算は苦手だし、細かなことなんて全然できませんからね(笑)。
それを自覚していると、それが得意な人に会った時に『手助けしてくれる?』って頼めますよね。そうやって何人かでひとつのことをやっていけばいいんです」
―――ひとりで頑張ろうとする必要はないんですね。
「そうですよ、ひとりで全部やろうとすると疲れますからね。それに、そもそもひとりで全部できる人なんていません。肩の力を抜いて『できない!』って宣言しちゃったほうがいいですよ」
―――子育てにしても何にしても、ひとりで抱え込まないことですね。疲れるし、イライラするし。人に「手伝ってほしい!」って言えたらいいですね。
「そうですよね。私、以前は子どもたちには“誰かの役に立つ人になってほしい”と思っていました。
でもね、東日本大震災直後から現地に支援に行って、こちらに帰ってきた時につくづく思ったのは“「助けて」って言える人になってほしい”ということでした。
東北という土地柄なのかもしれませんが、みなさん我慢強い。『大丈夫です』って言われるんです。いろんな支援の手が差し伸べられても、それを断ってしまう人もいてね。そういう時に手を離さない人になってほしい。
“人に「助けて」と言って手を差し伸べられたら、その手を離さないでね”ってことを、子どもたちに伝えていきたいなと思いました」
SNS時代だからこそ、日々の生活での人との関わりを大事にして
―――分からないから教えてほしい、ということが言えない人も多いです。
「人に聞かずにスマホで検索、とかね。そのことは避難所でも感じました。あの時はスマホが普及しはじめた時期だったのですが、10代の子がスマホを持って支援に来ていたんです。
今ある支援物資のなかから、ものを食べられないお年寄りに食料を準備しなくてはならないという時に、彼はスマホで検索しはじめて。そして、青森から緊急支援として届いた清涼飲料水とりんごで何ができるのか、『検索しても、出てきませんでした』って言うんです」
―――とりあえず検索、なんですね。
「『今、避難所には高齢者の方がいっぱいいるんだから、りんごをどうやって柔らかくすればいいですか?って、直接聞けばいいんじゃないの?』と伝えたら、聞きに行きましたけどね。
ケアが必要で避難されている高齢者もいるけれど、そうじゃない方もいっぱいいるんだから、聞いたら教えてもらえるのにね。なんかその辺りのバランスがね…」
―――人に聞くというアナログ的なこととデジタルのバランス、難しいです。
「そうですね。でも、スマホだけでは災害時を乗り越えることはできません」
―――SNSを利用している子育て中のお母さんも多くて、それに助けられている人もいます。でも、SNSでつぶやいて共感を得られればいいのですが、そうじゃない反応があると気が滅入ったりもして。
「SNSでつながっている人が、自分が熱を出した時におかゆを届けてくれるわけじゃないですからね。やっぱり日々の生活のなかで、生身の人とやりとりをしたいです。逆にSNSが発達すればするほど、人と人とのつながりが大事になってくると思いますよ」
―――やはり直接のコミュニケーションですね。
「コミュニケーションは練習するしかありません、小さい頃からね。言ってみれば、子どもは練習をしている最中です。お母さんも嬉しいことは「嬉しい」、ありがたいことは「ありがたい」、大変なことは「大変」と、生の言葉にして喋って、どんどん人とコミュニケーションをとりましょう。ツイートするのではなくてね(笑)」
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●NPO法人「
地域の寄り合い所 また明日」代表理事。総合施設長、コーディネーター、保育士。
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