代謝がよくなって汗をかきやすくなる妊婦にとって、水分補給はふだん以上に重要。にもかかわらず、「むくみが心配」「水分をとると体が冷える?」など、水分について不安や疑問を持つ人も。暑い夏、水分とじょうずにつきあう方法を産婦人科医の成田例弘先生に聞きました。
じょうずな水分補給で健康維持に努めましょう!
女性は妊娠すると体の脂肪がふえ、その脂肪が燃焼することで基礎体温が上がります。また新陳代謝も活発になるので、ふだんより暑さを感じやすかったり、汗をかきやすくなったりしますね。
さらにおなかの赤ちゃんの代謝もお母さんがするわけですから、妊娠中はいつも以上に、こまめな水分補給が必要です。
水分をとることは脱水症を防ぐだけでなく、血液の流れをよくする、便をやわらかくする、体内の老廃物を流して新陳代謝を促し疲れにくくする、尿量をふやして膀胱内や尿道の細菌を洗い流すなど、さまざまな体の不調を予防することにもつながります。
妊娠中の健康維持と、おなかの赤ちゃんの健やかな発育のためにも、十分な水分補給を心がけてください。
妊婦の一日の水分は「最低2ℓ+ふだんより多め」を意識
人間は飲み水&食品の水分で、1日最低2ℓの水を必要としています。ただし、妊娠中の女性はおなかの赤ちゃんの分もあわせて考えなければいけませんから、「ふだんより少し多め」を意識して。
具体的には、お母さんの体に脂肪がつき始める妊娠20週目ぐらいから、徐々に10〜30%量アップさせていくのがよい、と言われています。
おなかの赤ちゃんが急激に大きくなる妊娠30〜40週には、子宮に大量の血液が集中しますから、赤ちゃんにサラサラの血液を送るためにも、こまめな水分補給を心がけましょう。
ちなみにつわりの時期は、とり込んだ水分を体内に蓄えるように体が働くので、つらくなるほど水分をとる必要はありません。飲みやすいものでじょうずに補ってください。
水分は「少しずつ、頻繁に、かむように」とる
一度にたくさんの水分をとると過剰の水分が胃液を薄め、胃に負担をかけてしまいます。あわせて水分の吸収も悪くなるので、水分補給は「少しずつ、頻繁に」が基本。
のどが渇く前に、1回200㎖程度を何度かに分けてとるようにしましょう。その場合も一気飲みではなく、かむようにして飲むと、体に負担がかかりません。
腎臓の機能が正常なら水を飲んでもむくみません
水分がむくみの原因と思われがちですが、むくみは腎臓の機能が低下して体内の余分な水が排泄されず、体内にとどまってしまうことで起こります。腎臓の機能が正常な人なら不必要な水は体外に排出されますから、水を飲んでむくむということはありません。
ふつうの人より基礎代謝量がアップしている妊婦さんにとって、水分補給はとても大事。むくみを予防するには、水分ではなく、塩分を控えましょう。
目指せ1日2ℓ!「夏の水分補給生活」スケジュール
「1日に2ℓも飲めない…」とあきらめモードの人のために、理想の水分補給法をタイムテーブル形式でご紹介します。
【7:00】朝起きたらコップ1杯の水を飲む習慣を
寝ている間に失った水分を補給するため、朝起きたらまずはコップ1杯の水をゴクゴク。新陳代謝が促され、体中の細胞がリフレッシュ! 自律神経が目覚め、体も頭もスッキリです。便秘にも絶大な効果あり!
【8:00】3度の食事のときにもコップ1杯の水かお茶を
この場合の水分は食べ物を飲み込むためのものではなく、あくまで1日2ℓ飲むための補給と考えて。ちなみに食事の前にあたたかいもの(お茶やおみそ汁)を飲むと、交感神経の高ぶりが抑えられ、食べすぎを防ぐ効果も。
【10:00】家事の合間にはホッとなごめるハーブティーや、フルーツティーがおすすめ
朝の目覚めがいいと午前中の活動も活発に。その分、水分も失われがちなので、10時ごろに一度ティータイムを設けましょう。リラックスは心の健康にも効果的。
【12:30】気温がぐんぐん高くなる日中は、意識して水分をとるように
暑さが厳しくなる午後に向けて、水分補給も積極的に。ランチのときはスープやおみそ汁のほかに、コップ1杯の水かお茶を加えましょう。
【15:00】午後のティータイムは低カロリーのおやつとあたたかいお茶で
午後は気温が高くなり、体力を消耗しがち。3時のおやつタイムにひと息つけば、体の疲れを癒やせます。お出かけするときはペットボトル入りの水かお茶を必ず携帯し、こまめな水分補給を忘れないこと。
【19:30】食べすぎが心配な夕食時にはコップ1杯の水かお茶がブレーキ役に
体重管理の面からも、夕食は食べすぎないようにしたいですね。そんなときにコップ1杯の水かお茶がお役立ち!かむようにして飲めば、満足度もアップします。
【20:00】水分を失いやすいおふろ上がりには水分をたっぷり補給!
入浴中はたくさん汗をかくので、おふろから上がったらしっかり水分補給して。さらに化粧水やウオータースプレーなどで、外側からも潤いを与えます。脱水症が心配なので、5分以上お湯につかるのはやめましょう。
【23:30】寝ている間はかなりの量の汗をかくので寝る前にも1杯!
寝ている間にたくさんの汗をかくのに、朝まで水分が補給できないため、血液が濃くなりがち。夜寝る前の水分補給は、この血液ドロドロを防ぐ効果があります。夜トイレに立ったときも水を飲むのがいいですね。
ここで紹介したそれぞれの時間に200㎖の水分をとれば、トータル1,600㎖ の水分を摂取。これに食品の水分をプラスすると1日2ℓ程度の水分がとれます!