転職の理由は人それぞれ。より高収入を求めてキャリアアップを目指す人もいれば、やりがいを求めてキャリアチェンジをする人もいます。なかには会社の都合でやむを得ず退職し、再就職先を探す人もいるかもしれません。国では「早期再就職の促進」を目的として、さまざまな支援を行っています。ここでは、そのうちのひとつ「就業促進定着手当」について解説します。転職前にぜひ参考にしてください。
就職促進給付とは?「就業促進定着手当」って何?
「就業促進定着手当」とは、雇用保険に加入していた人が失業したときに受けられる保障「就職促進給付」のひとつです。
雇用保険に加入していると、失業時に基本手当(失業保険)が受けられることは広く知られていますが、雇用保険は社会保険制度のひとつで「強制適用保険」とされています。
雇用保険は、月の勤務日数や1日の勤務時間など、一定の条件を満たして働く場合には必ず加入しなくてはなりません。そのぶん、失業時には失業保険をもらえたり教育訓練を受講できたり、再就職に向けての支援を受けられます。さらには再就職時にも支給される手当があるので、忘れずにチェックしておきましょう。
ちなみに、平成31年度の雇用保険料の料率は賃金の0.9%とされ、事業者が0.6%、労働者が0.3%を支払います(業種によって料率が異なります)。ここでいう賃金とは、各種手当を含み、社会保険料や所得税などが引かれる前の金額です。例えば、ある月の給与の総額が20万円だった場合、600円が雇用保険として差し引かれます。
再就職手当
再就職手当は、基本手当(失業保険)の受給資格がある人が再就職した際に支払われる手当です。再就職には、雇用のほか、起業して待期期間満了後1ヶ月が経過すれば受給できます。基本手当の所定給付日数が残っている間に再就職が決まると、以下の計算式にしたがって残りの基本手当の一部が支給されます。
【所定給付日数の支給残日数 × 基本手当日額 × 給付率】
給付率は残日数によって異なり、3分の2以上では70%、3分の1以上では60%で計算します。基本手当日額4,000円・所定給付日数120日の人を例に、シミュレーションしてみましょう。
100日(残日数3分の2以上)× 4,000円 × 70% = 28万円
50日(残日数3分の1以上)× 4,000円 × 60% = 12万円
再就職手当を受給するには、「基本手当の受給手続きを行っていること」「基本手当の支給残日数が所定支給日数の3分の1以上あること」が基本条件です。そのほかにもいくつかの条件があり、すべてに当てはまらないと受給できません。受給対象となるかどうかは、ハローワークのホームページや窓口で確認しましょう。
就業手当
アルバイトや派遣などの非正規雇用の仕事に就いた場合には、就業手当を申請しましょう。就業手当は、「基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上ある」場合に支給される手当です。支給額は以下の式によって計算されます。
【就業日 × 基本手当日額 × 30%】
基本手当日額は、1日当たりの支給額の上限1,831円(60歳以上65歳未満は1,482円)と設定されています。毎年8月1日以降、変更されることがあるため、注意しましょう。
申請には、給与明細などの働いていることを証明できる書類が必要です。また、再就職手当と同じくクリアすべき条件があるため、ハローワークの窓口で相談してみましょう。
就業促進定着手当
就業促進定着手当は、再就職後の賃金が離職前の賃金よりも下がってしまった場合に受給できる手当です。この手当を受けるには「再就職手当を受けていた」という前提条件があります。
つまり、早く再就職を決めた人は、基本手当の残日数の一部が再就職手当として支給されるだけでなく、下がった賃金も一部補填されるといううれしい制度なのです。次は、就業促進定着手当の受給条件や計算方法、申請方法などについて詳しく説明していきましょう。
就業促進定着手当の支給対象
就業促進定着手当の支給対象となるのは、次にあげる条件をすべて満たしている人です。
・再就職手当の支給を受けていること。
・再就職後、同じ事業主に6ヶ月以上、雇用保険の被保険者として雇用されていること。
・再就職後6ヶ月間の賃金日額が、離職前の賃金日額を下回ること。
注意したいのが、「6ヶ月以上、同じ事業主に雇用されていること」という点です。6ヶ月未満で出向などの理由により別の勤務先に移った場合には、たとえ事業主の都合だったとしても手当の対象外となってしまいます。また、再就職が起業によるものであった場合にも、受給できません。