この記事は、新生児のおしゃぶりについてまとめたものです。おしゃぶりは便利な育児グッズですが、使用については賛否あるため迷ったり悩んだりしているママもいるでしょう。そこで今回は、おしゃぶりのメリット・デメリットをはじめ、使うときの注意点などをまとめました。
おしゃぶりとは?
「おしゃぶり」は昔からある育児グッズの1つで、ママの乳首の形をまねて作られています。くわえることで、赤ちゃんはママの乳首を吸っているような感覚になります。
乳首の形をしていて、寝かしつけやグズり対策に有効なグッズ
おしゃぶりは、赤ちゃんを寝かしつけるときやグズったときなどに、ママの強い味方になってくれる便利なアイテムです。素材はゴムやシリコンなどがあり、形もメーカーによって工夫されており、最近はファッション性の高い市販品も多くなりました。
ただし、おしゃぶりの使用についてはメリットだけでなくデメリットもあるので、使う場合は両方をきちんと知っておくことが大切です。
赤ちゃんの指しゃぶり行動ってどんなもの?
「おしゃぶり」と「指しゃぶり」は、同じようなものと思っている人も多いかもしれませんね。でも、指しゃぶりはおしゃぶりとは違い、赤ちゃん時代には発達上の重要な意味を持った行動です。
新生児の指しゃぶりは、無意識な「吸てつ反射」によるものです
赤ちゃんは、実はママのおなかの中にいるときから指しゃぶりをしています。そして、実際に生まれた直後からも指しゃぶりをする赤ちゃんはよくいます。
生まれたばかりの赤ちゃんには、自分の意志とは関係なく無意識に体が動いてしまう「原始反射」がみられます。これは、自分の力だけでは生きていけない赤ちゃんが、生命を維持するために必要な動作です。
➤➤赤ちゃんの「原始反射」とは?種類や注意すべきことって?【小児科医監修】新生児の指しゃぶりは、原始反射の1つで「吸てつ反射」といいます。よく、赤ちゃんの口のまわりをママの指などで軽くふれると、強い力で吸いつきますね。これは、赤ちゃんが母乳やミルクを飲むための動作で、口元に近づいたものはママの乳首と思って本能的に吸いついてしまうのです。
この吸てつ反射は妊娠28週ごろからみられるようになりますが、発達の過程で一時的にするもので、生後5~6ヶ月になると自然に消えていきます。新生児期の赤ちゃんにとってはごく自然な動きです。
1歳ごろまでの指しゃぶりは、発達上とても大切です
赤ちゃんは、生後1ヶ月ごろから自分の指をなめるようになり、生後2~4ヶ月ごろからは自分の指だけでなく、口の近くにあるものをつかんで無意識に吸うようになります。生後5ヶ月ごろになると、身近なものに手を伸ばしてつかみ、何でもなめるようになります。これは、見たものを手で取る「目と手の協調運動」の練習になると同時に、何でも吸ったりなめたりすることで、物の温度やにおい、味、感触などを確かめ学習しているのです。
1歳ごろまでの指しゃぶりは発達過程において大切な動作なので、無理に止めさせるようなことはしないでください。また、はいはいやつかまり立ちをするようになると、指しゃぶりをしていると自由に動けないため、指しゃぶりは自然に減っていくもの。心配はいらないので、見守ってあげましょう。
おしゃぶりの効果と必要性は?
おしゃぶりの使用については昔から賛否両論ありますが、おしゃぶりは指しゃぶりのように必要なものなのか、違いを知っておきましょう。
寝かしつけやグズり対策に有効ですが、必要ではありません
1歳までの指しゃぶりとは違い、おしゃぶりに発達上の意味はなく、必要なものではありません。ただ、おしゃぶりは「寝かしつけのとき」「外出先で騒いだとき」「グズったとき」などに使うと赤ちゃんがおとなしくなるため、助かるというママも多いでしょう。
おしゃぶりを吸うと母乳やミルクを吸っているような感覚になり、赤ちゃんは精神的に落ち着くのですね。また、赤ちゃんが静かになる切り札があることで、ママの子育てストレスも軽減されるというメリットもあるでしょう。
おしゃぶりの悪影響とはどんなもの?
赤ちゃんの精神安定剤的な役割を果たすおしゃぶりですが、使用について否定的な意見が根強いのは、メリット以上にデメリットが大きいからです。
長期の使用により、歯の噛み合わせに悪影響があります
小児科医と小児歯科医から成る「小児科と小児歯科の保険検討委員会」がまとめたおしゃぶりに関する提言によると、一番のデメリットは「長期的に使うと、歯の噛み合わせに影響する」ということです。
歯科医師によるさまざまな調査の結果、赤ちゃんのころからずっとおしゃぶりを使っていると、2歳のころには「開咬」(上下の歯を噛み合わせたときに前歯や横の歯の間に隙間があいてしまいうまくかむことのできない状態)になる子が多くなるといいます。
この傾向は、おしゃぶりを使い続けている期間が長くなるほどより多く見られるようになります。このように、おしゃぶりの長期使用が噛み合わせに及ぼす悪影響は見過ごせません。
開咬。奥歯を噛み合わせても、上の前歯と下の前歯の間にすきまができてしまい、開いてしまいます。
発達の過程に必要な経験ができにくくなります
前述したように、赤ちゃんは生後5ヶ月ごろになると何でも口にもっていってはなめたりしゃぶったりして、「目と手の協調運動」の練習をするとともに、物の形状や性質について学習しています。ところが、おしゃぶりをしていると物をなめることができず、発達上とても大切な学習をする機会が奪われてしまうことになります。
また、おしゃぶりで口がふさがれていると、ママやパパから声をかけられたときに応じるような声を出すこともできなくなり、発語自体も遅れがちになってしまいます。
赤ちゃんがおしゃぶりをしていておとなしいと、ママが話しかけたりあやしたりして、赤ちゃんとコミュニケーションをとる機会も少なくなってしまいます。
おしゃぶりはいつごろから始めて、いつまで使っていいの?
おしゃぶりは一度口にすると長時間くわえたままになるうえ、習慣化して毎日使い続ける傾向があります。そのため、さまざまなデメリットを受けやすくなってしまうので、使うとしても十分な注意が必要です。
使う場合も、遅くても2歳半までにやめましょう
おしゃぶりは新生児からでも使うことができますが、前述したように月齢が上がるにつれて発達に必要な機会を失ってしまう危険もあります。使うとしても、どうしても泣き止まないときだけにするなど、使用時間はできるだけ短くする努力をしましょう。
おしゃぶりを使っていると、噛み合わせに影響が出ることも明らかです。ただし、奥歯が生えそろう2歳半ごろまでにやめれば、噛み合わせの異常は発育とともに改善されます。
そこでおしゃぶりを使う場合は、遅くても2歳半までにはやめることが大切です。奥歯が生えそろう2歳半から3歳ごろになっても使い続けていると噛み合わせの異常が治りにくくなります。
おしゃぶりの消毒方法は?
おしゃぶりは赤ちゃんが直接口にいれるものなので、使うなら衛生面への配慮が必要です。哺乳瓶と同じように、使ったらしっかり消毒をしましょう。
哺乳瓶と同じ方法で消毒しましょう
おしゃぶりの消毒は、哺乳瓶などと同じ方法で行います。まず、哺乳瓶用洗剤などで使ってしっかり洗いますが、哺乳瓶の乳首専用の細いブラシを使って先端まできれいにしましょう。十分すすいだあとは、煮沸する、電子レンジにかける、消毒液につける、などの方法で消毒します。
特に新生児期は抵抗力が弱いので、1回1回使うたびにきちんと洗って消毒することを忘れずに。自分の手をなめるようになったら、きれいに洗って清潔にしてあれば、ときどき消毒する程度でかまいません。
おしゃぶりの上手な活用方法は?
「赤ちゃんがグズったらすぐにおしゃぶり」ではなく、まずは赤ちゃんの気持ちを満たす工夫をしてあげましょう。使う場合は年齢によって、次のような点に注意してくださいね。
【0歳】発達に必要な行動を邪魔しない使い方を
1歳までは、赤ちゃんの発達に必要な機会を失わずにすむよう、おしゃぶりをくわえさせたままにしないことが大切です。赤ちゃんが泣いたらまず、なぜ泣いているかを考えて原因を取り除いたり、あやしたり、言葉がけをしたりする努力をしましょう。
おしゃぶりを使うのは最終手段だと考え、どうしてもというときだけに。おしゃぶりを与えて赤ちゃんがおとなしくなっても、あやしたり一緒に遊んだりして、短時間でおしゃぶりをはずすようにします。
【1歳~】おしゃぶりホルダーを使うのはやめます
1歳代は、言葉を覚えるための大切な時期です。赤ちゃんは、ママやパパなど身近な大人とのやりとりの中から言葉を覚えていき、やがて発語へとつながります。赤ちゃんの順調な発語のために、おしゃぶりホルダーを使っている場合は1歳過ぎたらはずしましょう。
赤ちゃんの手が届くところにいつでもおしゃぶりがある、という状態を作らないようにすることが大切です。そして、親子で一緒に遊んだり外に出る機会を増やして、2歳までにおしゃぶりがやめられるよう心がけましょう。
【4歳~】4歳過ぎてもやめられないときは、小児科で相談を
4歳になってもどうしてもおしゃぶりがやめられない場合は、情緒的な面への考慮が必要になってきます。その場合は、かかりつけの小児科などで相談しましょう。
おしゃぶり依存にならないよう、十分注意を!
おしゃぶりは、一度使い始めると習慣になりやすく、月齢が高くなるほどやめるのが難しくなります。おしゃぶりがあると赤ちゃんがおとなしくしていてくれるので、デメリットはわかっていても、ママもつい気軽に使いたくなるでしょう。
おしゃぶりは赤ちゃんにとってもママにとっても依存性が高くなりがちなのが特徴です。でも、噛み合わせへの影響や発達に必要な機会を奪うなど、デメリットがあることをしっかり認識してほしいのです。それでも必要という場合は、親子ともにおしゃぶりに依存しなくてすむよう上手な使い方をしてくださいね。