赤ちゃんは、大人がしない動作をすることがあります。「モロー反射」もその一つ。
この記事では、細部小児科クリニックの細部千晴先生に取材し、モロー反射とはどんな動きか、いつからいつまで見られるのか、モロー反射とよく似た動きや病気は?…などについて、ご紹介します。
モロー反射とは?原因は?
仰向けに寝かせた赤ちゃんの頭を15㎝ぐらい持ち上げた後、急に下げると、両腕を広げてからしがみつくように両腕を動かす動作をします。寝かしつけるときに見たことがあるというママやパパもいるのではないでしょうか。
これは「モロー反射」といって、新生児の時期から現れる「原始反射」の一つ。正常な反射なので、心配しなくても大丈夫です。
➤➤赤ちゃんの「原始反射」とは?種類や注意すべきことって?【小児科医監修】モロー反射を含む原始反射は、中枢神経系の反射によって無意識に筋肉が動く現象のため、特に原因となるものはありません。大きな物音など、外からの刺激でも似たような動きをすることがありますが、その場合は赤ちゃんが驚いたために起こると考えられ、モロー反射とは異なります。
モロー反射はいつまで続く?
「モロー反射があるかどうか、よくわからない」「まだモロー反射があるけれど、大丈夫?」初めて育児をするママやパパには、モロー反射がいつから始まっていつまで続くのか、気になりますね。
モロー反射をはじめとする原始反射は、ママのおなかの中にいるときから始まっているとされます。そのため、生まれてすぐから見られ、多くは生後4~6ヶ月ごろまでに消えていきます。
ただし、赤ちゃんの成長や発達には個人差があるため、モロー反射が消失する時期は赤ちゃんによって異なります。
生後3~4ヶ月ごろに受ける乳児健診では、モロー反射も確認するので、健診を受けていれば特に心配することもありません。
モロー反射が激しい時、どうすればいい?
モロー反射のときの動作が激しかったりすると、病気ではないかと思うかもしれませんが、動作の大きい、小さいはあまり気にしなくて大丈夫です。
大きな音などの外からの刺激によってモロー反射に似たような動きをする場合では、刺激に敏感な赤ちゃんは動きが激しかったり、寝ていても目を覚まして泣いてしまったりすることがあります。なぜ動きが激しいのか心配になったり、赤ちゃんが泣きだしてママやパパが休まらないこともあるでしょう。
そのような場合には、なるべく刺激を少なくしてあげるといいかもしれません。ねんねする場所の電灯は暗めにする、エアコンの風が当たらない場所に寝かせるなど、環境を見直してみましょう。衣服を着せすぎていないか、部屋が寒くないかなども確認してみて。
➤➤赤ちゃんが〈安心・安全・快適〉に過ごせる居場所づくりのポイントとは?家の中で起こりやすい事故例もチェックおくるみでくるんであげるのも一つの方法です。おなかの中にいたときと同じように体の周りを包まれると、赤ちゃんは安心できます。
赤ちゃんの肌に直接触れるおくるみは、肌触りの良い素材を選んであげましょう。春から夏は吸水性が高い綿100%のパイル生地や通気性の良いガーゼ生地、秋から冬は保温性が高いフリース生地など、季節に合わせて使うのがおすすめです。
使い方は簡単。四角いおくるみの場合、四角のうちの一つが上にくるように置き、上になっている角を内側に折り曲げて平らにしたところに赤ちゃんの頭を出すようにして、仰向けに寝かせます。
右側または左側を赤ちゃんの体にかけたあと、下側を折り曲げてその上端を最初に折り曲げた部分に折りこみ、最後に反対側を赤ちゃんの体にかけて包みます。
両脚を伸ばして包むと股関節脱臼を起こす可能性があるので、赤ちゃんの脚を自然なM字型に保つよう、下半身はゆるめに巻きましょう。
モロー反射とてんかんの見分け方は?
外からの刺激によってモロー反射に似たような動きをする場合以外にも、ママやパパがモロー反射と思いやすい動きをするものに、「点頭てんかん」があります。
点頭てんかんは生後1歳未満、主に生後3~11ヶ月ごろに発症し、「West症候群」とも言われます。寝起きや眠いときに頭が突然前に倒れたり、手足を一瞬縮ませたりする動作が繰り返し続き、この発作が1日に何回も起こります。
発作が起こるようになった前後から「あやしても笑わない」「不機嫌になる」「首が座っていたのにぐらぐらするようになる」「お座りができなくなる」など、発達の退行が見られるのも特徴です。
家庭でママやパパがてんかんかどうかを見分けることは難しいので、モロー反射が見られなくなる生後4~6ヶ月を過ぎても似たような動きが繰り返し起こる場合には、動画を撮影し、それを持って小児科専門医に相談しましょう。
モロー反射は発達障害と関係ある?
発達障害の一つとして「注意欠如・多動症」(ADHD)が知られていますが、そのうち「多動」は「落着きがなくじっとしていられない」という特徴があります。モロー反射に似たような動きが続く場合、「発達障害かも?」と心配になるママやパパもいるかもしれません。
しかし、モロー反射などの原始反射がなかなか消えないことが発達障害と関係があるかどうかは、はっきりわかっていません。また、赤ちゃんの成長や発達には個人差がありますし、この月例ではよくわからない症状ですので、あまり気にしないでください。
➤➤発達障害ってなに?赤ちゃんのときの特徴は?
モロー反射がなくならない&見られないこともある?
モロー反射が見られない、あるいは半年以上過ぎてもなくならないのは、何らかの病気なのでは?と不安に思うママ・パパもいるようですが、心配する必要はありません。
例えば、脳の損傷によって起こる脳性まひは、多くは運動発達に障害が起こるため、首が座らなかったり、ハイハイや寝返り、立つこと、歩くことなどが遅れたり、できなかったりします。
ただ、この脳性まひかどうかは、モロー反射のみで判断できるものではありません。生後4ヶ月ごろに行う乳児健診では、「引き起こし反射」といって、仰向けに寝かせた赤ちゃんの両手をもって上に引き上げ、首が座っているかどうかを確認するなど、多くの反射を確認し、経過を見て診断していくのです。
そもそも、赤ちゃんがモロー反射をしているのか否かを、一般の人が見分けることはなかなか難しいもの。また、赤ちゃんの発達のスピードはその子によってまちまちなので、基本的には神経質にならないで。
お住まいの自治体で決められている乳児健診を欠かさず受ける、何かあったときには気軽に相談できるかかりつけ医を持つ、といったことを心がけましょう
取材・文/荒木晶子