4歳の娘と3歳の息子の子育てをしているフリーアナウンサーの伊藤未奈です。
5年先が予想できないと言われている不確実な世界でも、我が子には自分で未来を切り拓いて、幸せな人生を送ってほしい。
親としてのそんな願いを実現する一つの手段として、私は自然の中で子どもを自由に遊ばせ、そこからの「学び」を最大限に活かす「森のようちえん」に3歳の息子を通わせています。
➤➤「森のようちえん」って何? わが子を通わせて気づいたことと驚きの変化|SDGsな子育てがしたい #1今回のテーマは、自然との触れ合いが教えてくれたこと。森のようちえんでの活動や自然体験から、感じたこと、学んだことをお伝えします。
危険回避能力と判断力
公園の遊具や室内遊び場には、安全を考慮して「年齢制限」や「年齢別ゾーン」が設けられていますが、自然にはそういった規制がありません。ありのままの姿で、来るものを拒まないその環境が、子どもの危険回避能力と判断力を育てると言われています。
当時2歳だった息子、年中の男の子たちを真似して、せせらぎの中にある滑りやすい石の上を渡ろうとしたことがありました。
身体能力も高く、慣れているお兄ちゃんたちの身のこなしを見て、自分もできると思ったのでしょうか、息子はためらうことなく後ろをついて行きました。
「滑るよ!危ないよ!」
という言葉が喉まで出かかったのですが、息子が通う森のようちえんでは「大人の手出し口出しは最小限に」という方針があります。
言葉を飲み込む代わりに、いつ滑ってもいいように後ろでスタンバイ。すると案の定、息子は足を滑らせました。
少しバランスを崩しただけですぐに持ち直したのですが、それから息子は、石を渡るときは滑らないように、一歩一歩踏みしめて慎重に歩くようになりました。
おそらく、滑る前に私が止めていたら、きっと何回注意しても同じことを繰り返していたと思います。一度の実体験が、大人の再三の注意よりも効き目があるのです。
自然は手加減してくれないけれど、年齢や能力で区別をすることもない。その中で、自分で考えて行動できるよう、大人は適切にサポートする。
自分にできること、自分にはまだ早いこと、ちょっと頑張ればできそうなことなどを判断する力は、こうやって培われていくのだなと思いました。
五感で気づく力
新人アナウンサーの研修でよく言われたことの一つに、「リポート力は気づく力」という教えがありました。多くの人が見落としていること、見ているけれど認知していないものに、どれだけ気づくことができるかが、表現豊かなリポートにつながるというものです。
例えばお天気キャスターなら、雲や空を常に観察していて細かい違いに気づくだろうし、季節や天気によって変わる風の匂いや空気感にも敏感です。
それはみんなが平等に見たり感じたりしていることですが、興味を持って”気づく”には、また別の力が必要になってくるのです。
私は、自然に多く触れている子どもたちは、この「気づく力」がとても豊かだなと感じています。
森のようちえんに行き始めたばかりの頃、私は、年中年長の女の子たちが集めてくる可愛いお花や木の実が、どこにあるのかわかりませんでした。でも
「きれいだね〜。どこにあったの?よく見つけたね」
と訊くと、たいてい
「え?すぐそこにあるよ」
と言われるのです。たしかに言われてみると、なんで気づかなかったんだろうと思うほど、いつも見ているなんでもない場所にある…まさに、見てはいるけれど認知していない状態だったのだと思います。
多くのものが雑多にある自然の中で、五感をいっぱいに使っている子どもたちは、私には見つけられない花を見つけるし、私には聴こえない鳥の声に気づける。
それだけできっと日常はグッと鮮やかになり、それが好奇心を育む基礎にもなっているのかなと思います。
あるものでつくる創造力
息子が通う森のようちえんでは遊具やおもちゃは使わず、自然の中にあるものだけで遊びます。
ケーキ屋さんごっこをしたければ、土と水を混ぜて泥を作るところから始め、木の実や葉っぱを集めてきて上に飾ったり、小枝を拾ってきてロウソクにしたり、遊ぶ”おもちゃ”を今ある素材で作らなければいけません。
また、思うままに作っていた”何か”から、見立て遊びが生まれて発展していくことも多々あります。
松の葉っぱを大量に集めてきてラーメン屋さんをする子もいれば、同じ大量の松葉でもそれをコンロの火に見立てておままごとを始める子もいたり。
何にでもなる素朴な素材は、子どもの創造力を活かすのにぴったりなんですね。
家庭で気軽に取り入れるなら、積み木遊びが近いのかなと思います。色のついていない素朴な積み木があると、いろんな見立てができそうですね。
自然との触れ合いが教えてくれたこと
自然の中で幼少期を過ごすと、どんな環境にいても、自分の好きなことややりたいことを見つける力だったり、好ましくない環境を主体的に変えていこうとする気持ちだったり…自分の力で選び、生き抜く力が育つのではと感じています。
でもそれは必ずしも森などの広大な自然である必要はなく、森のようちえんでなければ育たない力でもなく、私たち親の声かけや関わり方次第で、近所の公園や都会の小さな自然の中でも育んでいけると思っています。
子どもの失敗を待ってみたり、自分で気づくのを信じてみたり。私は、普段はなかなかできないけれど、緑がある場所ではおおらかになれて、自然とそれができたりします。
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