この記事は赤ちゃんの『鵞口瘡(がこうそう)』についてまとめた記事です。『鵞口瘡』っていったい何!?耳慣れない言葉ですが病気なの?治療法はあるのでしょうか?ママ&パパが気になる点を小児科医に伺いました。
『鵞口瘡』とは何?
『鵞口瘡』は「がこうそう」と読みます。なんだか恐ろしげな字面ですね。
赤ちゃんの口の中に白い斑点が見えることがありませんか? ミルクやおっぱいのカスかなと思ってこすっても、なかなかとれない。無理にとろうとすると血が出たりしてギョッとします。これが『鵞口瘡』です。
『鵞口瘡』を引き起こしているのは、普通に体表や体の中にいる可能性がある、カンジダという菌です。
カンジダはカビの一種で、赤ちゃんだけでなく大人も持っています。口やおなかの中、性器などにいて、ふだんは何も起きませんが、体力が落ちたりすると皮膚や粘膜の一部で炎症を起こすことがあります。
カンジダが原因で起こる皮膚の症状を「カンジダ症」と言い、『鵞口瘡』は「口腔内カンジダ症」の別名です。
1歳以上になると、ほぼかからない
カンジダは赤ちゃんだけでなく子供も大人も持っていますが、『鵞口瘡(口腔内カンジダ症)』にかかるのはほとんどが小さな赤ちゃんか、免疫力の落ちた高齢者です。
小児科の現場では、1歳を過ぎるとまず見ることはありません。
赤ちゃんの『鵞口瘡』の症状
『鵞口瘡』は、口の中に「カビ」が繁殖した状態です。
舌の上やほおの内側、唇の内側、上あごなどに、白いポツポツした斑点があらわれます。それが広がり、舌一面がびっしりと白くなることもあります。
『鵞口瘡』は口内炎と違い、痛みやかゆみはありません。
見た目はギョッとすることもありますが、特に不快な症状が出るわけではないので、おっぱいの飲みや機嫌が悪くなることもまずないでしょう。
なぜなるの?赤ちゃんの『鵞口瘡』の原因
誰もが接触する機会のあるカンジダ。なぜ赤ちゃんだけが『鵞口瘡』にかかるのでしょうか。
赤ちゃんは免疫力が弱い
理由のひとつは、赤ちゃんの免疫力がとても弱いからです。
免疫力とは、ウイルスや細菌、真菌(カビ)などの異物から体を守る力のこと。
人は日々さまざまな異物と出会い、それらにひとつずつ打ち勝ちながら免疫力をつけていきます。赤ちゃんはママのおなかの中にいる間にある程度の免疫をもらいますが、自力で免疫を作る力はまだあまり強くありません。ですから病気にもかかりやすい。
大人なら「ちょっと調子が悪いな」ですむことが、入院するような重症になったりすることもあります。
大人だってカンジダを持っていることがあるのに『鵞口瘡』にかからないのは、赤ちゃんよりも免疫力が強いからです。
カンジダはママの乳頭からも赤ちゃんの口へ!?
もうひとつ、赤ちゃんが『鵞口瘡』になりやすい理由として、口の中により多くのカンジダが入ってきやすいことがあげられます。
赤ちゃんは生後2~3カ月になると、自分の手をじっと見てそれを口の中に持っていったりします。ガラガラなどのおもちゃが握れるようになると、それもやっぱりお口の中へ。なんでも口に入れるのは「これはなんだろう?」と確認する探索行動で、大切な成長のプロセスです。
でも、手や、手でふれたものをなめる行為は、手についていたカンジダが口に入ってくる機会を増やしていることになりますね。
おっぱいをあげる際に、ママの手が触れた乳頭や哺乳瓶の乳首からカンジダが入ってくることもあります。
赤ちゃんは大人のように口をゆすいだりうがいをしたりしませんから、一度入ってきたカンジダが外に出て行く機会も少ないのです。
そもそもの免疫力が弱い上に、カンジダが口の中に入ってきやすい行為が重なること。これが、小さな赤ちゃんが『鵞口瘡』になりやすい理由です。
赤ちゃんが『鵞口瘡』になったときの治療法
ほとんどの場合、『鵞口瘡』は前述のように、痛みやかゆみのないものです。自然に治ってしまうことが多いため、積極的な治療をしないこともよくあります。
口の中に塗る薬
口の中を痛がる、不快な様子がある、範囲が非常に広いといった場合には、薬が処方されることもあります。
『鵞口瘡』の原因であるカンジダは真菌ですから、治療に使うのは
・抗真菌薬の軟膏(フロリードゲルなど)
・殺菌作用のある消毒薬(ピオクタニンなど)
などです。
綿棒に薬をとり、『鵞口瘡』のできているところに塗ります。医師や薬剤師とよく相談し、用量用法をきちんと守って使いましょう。
ただし『鵞口瘡』は、一度治っても再発することの多い病気です。何度か繰り返すことが珍しくありませんが、成長に従って出なくなってきます。
赤ちゃんの『鵞口瘡』の予防法は?予防接種はある?
残念ながら、『鵞口瘡』を確実に予防する方法はありません。赤ちゃんの成長を待つ以外にできることはあまりなく、予防接種ワクチンもありません。
口に入るものは清潔を心がけて
心がけとしては、赤ちゃんが口に入れるもの――おしゃぶりや哺乳瓶、ママの乳頭などをできるだけ清潔に保つこと。手をこまめにふいてあげるのもいいですね。
ただし、神経質になって消毒をやりすぎる必要はありません。どんなにがんばっても無菌状態で育てることはできませんし、免疫の力はさまざまな菌やウイルスにふれることで強くなっていくものだからです。
特に不快な症状がなく自然治癒することが多いので、無理にとろうとしたりしないで様子を見てくださいね。