毎日続く育児には、疲れとストレスがつきもの。Baby-moの読者アンケートでは、95%ものママたちが育児ストレスを感じることがあると回答しています。かわいい我が子のはずなのに、育児ストレスを感じる原因は?その対処法は?
公認心理師であり、育児相談室「ポジカフェ」を主宰する佐藤めぐみさんにお話を伺いました。
ママたちの多くが悲鳴!「イライラする」「もう消えたい」
私が主宰している育児相談室には、育児ストレスを抱えたママたちからの心の悲鳴ともとれる相談が日々寄せられます。多かれ少なかれ、ほとんどのママが育児ストレスを抱えています。
ママたちはどんなことに育児ストレスを感じてる?
Baby-moの読者アンケートでも、育児ストレスを感じるママたちからたくさんのお悩みが届いています。
「娘はまだ大人の言葉が理解できない赤ちゃんだけに、思うようにならないことが続くと、ストレスのやり場がありません。毎日、自分の中に消化しきれないイライラが積もり、結果的に小さなことで我が子に当たり、怒ってしまいます。「もう消えたい」と思ってしまうことも…。」
(Yさん・9ヶ月の女の子のママ)
「ワンオペ育児に疲れて、子どもだけでなく自分自身にも関心を向ける気になれません。疲れがたまってくると、子どもといっしょに遊んでいてもヘトヘトで声かけも減り、疲れた顔や乱れた髪の自分に手をかける気にもなれず...」
(Uさん・11ヶ月の男の子のママ)
「育児本やYouTubeで育児法を学んでも、いざ子どもと接して感情的になると、せっかく学んだ知識もどこかへ吹っ飛び、真逆のことをくり返してしまいます。そんな自分に自信が持てなくなっています」
(Aさん・1歳7ヶ月の男の子のママ)
こんなにも育児が疲れるのはなぜ?
育児が疲れる大きな原因のひとつは、自分の時間がとれないことです。新生児期は授乳やお世話で物理的に忙しくママが睡眠不足になってしまい、それがストレスとなります。
その後は子どもの成長とともに、ママも睡眠は確保できるようになりますが、今度はイヤイヤ期や、食べない、外出先で騒いでしまうなど、さまざまな悩みや気疲れが出てきて、それがストレスになっています。
私の感覚では、出産前に仕事をバリバリしていた人ほど、育児ストレスを抱えやすいように思います。仕事においては自分なりに目標をたてて、自分をコントロールしながらキャリアを築いてきたのに、赤ちゃんが相手だとそうはいきません。予測不可能な事態の連続で「こんなはずではなかった」とストレスを感じてしまうのです。
ワンオペ育児もストレスの原因
日本人は海外に比べて男性も女性も勤務時間が長いことも育児疲れの原因になっています。専業主婦であってもパパの帰宅が遅ければその分だけワンオペ育児の時間が長くなりますし、あなたがワーママで時短勤務だとしても、17時半頃帰宅して、夕食から寝かしつけまで、子どもの世話をすることはとても大変です。
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育児ストレスをためないために心がけるべきことは?
生活の中で手放せるものはないか見直してみる
共働きで時間がなかったり、ワンオペ育児の時間が長いことが育児ストレスにつながっているのだとしたら、育児と仕事の時間を短縮することは難しいので、まずは家事をとことん時短にすることを考えてみましょう。食洗機やお掃除ロボット、洗濯乾燥機は、投資だと思ってぜひ取り入れてみてください。
私の子育て時代はオランダで過ごしたのですが、オランダのママたちは家事の手抜きがとても上手です。子どものお弁当は、塩ゆでパスタを容器に入れただけのものだったり、パンとチーズを持たせるだけ。洗濯の頻度も少なめのようです。あとはムダな物を買わない国民性が、掃除や片づけ、買い物をも楽にしていると感じていました。
一度、私がママ友にキャラ弁の写真を見せたことがあったのですが、「何のためにしているの?」「食べたら終わりでしょ?」とさんざんな言われようでした(笑)。
「自分は何を大切にしたいのか?」引き算して考えてみることも大切
こんなふうに、家事もそれほどしませんし、日本に比べて勤務時間も少ないのでママたちのストレスが少ないのがオランダです。家事と仕事の時間が短い分、子どもに時間をかけてあげることができます。そのおかげか、オランダは子どもの幸福度ランキングが1位なのです。
家事、育児、仕事とやらなければならないことが多すぎて時間がなくなり、ストレスを感じてしまうときは「自分は何を大切にしたいのか?」と、引き算して考えてみることも必要かもしれません。
ストレスは「なくそう」より「減らそう」
とはいえ、子育てをしていてストレスを感じない人はいません。ストレスをすべてなくすことは難しいので、「なくす」よりも「減らす」ことを考えてみましょう。
家事など、自分以外に任せられるものはないか、自分で決めた生活のルールに縛られて「子どもとしっかり向き合いたい」という本来の目的を忘れていないか、振り返ってみるのもいいでしょう。
特にマイルールは曲者です。「タオルは毎日洗うものだ」と思っていると、何も疑うことなく毎日洗濯してしまうものです。自ら課しているルーティンで苦しんでいるケースは多いので、「これ本当に必要なこだわり?」と検討していくことも軽減につながるでしょう。
育児ストレスがマックスになったらどうする?
ストレスは日々たまっていくものなので、一気に解消しようとするより、毎日少しずつリセットするようにするのが効果的。「しばらくひとりでお出かけしていないから、今日は特別にひとり時間を作る」ではなく、ちょっとウキウキするものを毎日の生活に取り入れて、1日単位で切り替えることがおすすめです。
例えば寝る前にYouTubeを見るとか、好きな飲み物を飲むとか、自分の好きなことを1日1つ取り入れてみましょう。
また、周りと比較をしてしまうとこれもストレスの原因になります。もともと日本人は周りの人と同じであったり、輪からはみ出さなかったりすることで「これでいい」と安心しやすい思考傾向があります。
しかしこれだと「うちの子は〇ヶ月なのに、まだ〇〇ができない」「〇〇さんはいつもきちんとメイクをしているのに自分はできない」など、ストレスを感じやすくなります。
このような思考のときに、「うちの子はうちの子」「私は私」と自分にメッセージを送ることで目線がシフトできる場合は、ぜひ意識的に取り入れてほしいと思います。
一方で、比較グセがやめられないという方は、それが根強いクセになってしまっているのかもしれません。考え方が自分を余計に疲れさせていることはよくあるので、ひどいストレスが続いてつらい場合は、専門家のカウンセリングを受けてみる方法もあります。
それまで頭の中がごちゃごちゃでどこから手をつけていいのかわからなかった場合でも、実際にだれかに話すことで整理されることはよくあります。1人で悶々と考えるとどうしても悪いことばかり考えてしまうものなので、そういう方は相談コーナーを利用するのは有効な手段でしょう。
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子育てには、これが正解、こうしたから完璧というものはありません。2人目の子育てで「離乳食は、あんなに一生懸命やり過ぎなくてもよかったな」と思うママが多いように、すべてを完璧にやらなくても子どもは育つものです。
育児疲れを感じたら、子どもが安全に生活できる最低限のことをして、やらなくてもいいところは力を抜くくらいがちょうどいいのかもしれません。
➤➤「子育てが苦しい」と感じてませんか?カリスマ保育士・てぃ先生が伝えたい「ハッピーになれる子育て」とは?取材・文/佐藤真紀