この記事は、赤ちゃんの把握反射についてまとめたものです。赤ちゃんの手にふれたとき、ギュッと強く握り返してくれると、とても嬉しくて、より愛おしく思いますね。このギュッと握る動作は、無意識に起こる体の動きで「把握反射」と呼ばれるものです。把握反射とはどんなものなのか、いつごろまで続くのかなどについて、小児科の先生に聞きました。
把握反射って何? どんな役割があるの?
原始反射のひとつで、手のひらや足の裏にふれるとギュッと握りしめます
把握反射とは、赤ちゃんの手のひらや足の裏にふれると、ギュッと力強く握りしめる動作で、「原始反射」のひとつです。
原始反射とは、生まれたばかりの赤ちゃんにみられる、無意識な体の動きのこと。
ふだん、私たちは「水を飲みたい」「転ばないようにつかまる」など、目的や意図を持って自分の意思で体を動かしていて、このような体の動きは「随意運動」といいます。
一方、原始反射は、脳からの指令とは関係なく、まわりからの刺激や働きかけにより勝手に起こる体の動きです。
生まれたばかりの赤ちゃんは、体の機能がとても未熟なため、自分の意思で体を動かすことができません。そんな赤ちゃんが生命を維持するために、助けてくれるものが原始反射なのです。
ものをつかんだり、つかまったりするための動き
把握反射は、手のひらや足の裏にふれたものをギュッと握りしめる動きで、これは、大昔に人間が樹上生活をしていたころ、木から落ちそうになったときにつかまるため、手足にふれたものをつかむという習性の名残ではないかと言われています。
原始反射には、把握反射のほかにも20種類ほどの反射運動があります。それらの中で、生まれたばかりの赤ちゃんに特有な動きや、赤ちゃんの神経や運動の発達をみるために健診でチェックする反射を以下にあげます。
・吸てつ反射赤ちゃんの口のまわりにふれると強い力で吸いつきます。生まれてすぐに、誰にも教わらなくても母乳を飲むことができるように備わっている力です。
・モロー反射大きな音がしたときや、上体がふいに傾いたときなどに、両手をパッと開きます。把握反射と同じように、木の上で生活していたころ、落ちそうになったときにしがみつこうとした習性の名残と言われています。
・引き起こし反射あおむけに寝ている状態から、赤ちゃんの両腕を持ってゆっくり上体を起こすと、首がすわっていない赤ちゃんでも頭を持ち上げようとします。
・原始歩行赤ちゃんの両脇を支えて立たせ、足の裏を床につけると、足を交互に前に出して歩くような動きをします。実際に歩き始めるのは1歳前後ですが、人間にはもともと歩くための能力がインプットされていることのあらわれと考えられます。
把握反射はいつまで続くの?
手は生後4ヶ月ごろ、足は10ヶ月ごろなくなります
原始反射は、生後間もない赤ちゃんの生命を維持するための動きであると同時に、その後の赤ちゃんの発達や動作につながっていくものでもあります。例えば、把握反射は、その後、手でものをつかむ動作につながっていきますし、吸てつ反射は赤ちゃん自身の意思と力で母乳を飲む動作につながります。
原始反射は、だいたい生後3~4ヶ月ごろから消失していき、その後、体の発達にともなって随意運動としての動作ができるようになっていきます。
原始反射の種類によって、なくなる時期は少し異なります。手の把握運動は、生後3~4ヶ月ごろに消失し、そのころから赤ちゃんは自分の意思でものを握ることができるようになります。足の反射は生後9~10ヶ月ごろになくなり、その後、赤ちゃんは自分の足で立てるようになります。
把握反射が弱い場合は病気の可能性があるの?
反射のあらわれ方は筋力などによっても違います
原始反射のあらわれ方には個人差もあります。反射は、神経と筋肉とが協力して起こるものなので、筋肉が発達している子のほうが強い傾向があります。
原始反射があるはずの時期に極端に弱い場合や、ほとんどない場合は、脳や神経の病気である可能性があります。ただし、原始反射については、生まれたときや生後1ヶ月健診で必ずチェックするため、何らかの異常があれば、その時点でわかるはずです。出産した病院や1ヶ月健診で何も言われておらず、その後の発育・発達も順調であれば、心配することはないでしょう。