パパやママを悩ませる、わが子のイヤイヤ期。前回は、なぜ子どもはあれもこれも拒否するのか、親はどうしたらいいのか、基本的な対処の方法をご紹介しました。
➤➤➤イヤイヤ期はいつから?いつまで続くの?上手な対処法を解説!【小児科医監修】今回は、「やってはいけないこと」の伝え方を、小児科医の渡辺とよ子先生がアドバイスします。
頭ごなしに叱るよりほめるほうが効果的
きちんとしつけないと将来とんでもない大人になるのでは?そんなふうに心配する親は少なくありませんが、社会のルールが理解できるようになってくるのは3~4歳から。
ちょうど、幼稚園や保育園で集団活動が始まるころです。それまでは、しつけの土台である心の根っこを育てることを優先しましょう。
心の根っことは、親子の愛着関係でつくられるものです。空腹を満たしてもらい、不安なときには抱っこしてもらい、やさしくほほえみかけられる。そんなうれしいかかわりが栄養となり、心の根っこが育ちます。
3歳ごろまでのイヤイヤ期は、この段階です。惜しみなく愛情を注がれ、愛されているという実感がなくては、そ
の後のしつけが成り立ちません。
でも、してはいけないことをやりたがることもありますね。その場合はきっぱり「ダメ」と伝えましょう。電車の中で騒いだら「シーだよ」と言って、親も静かにしています。静かに過ごせたら「立派だったね」と、たくさんほめてあげましょう。
しつけというと叱ることだと思われがちですが、実はほめることのほうが効果的な場合が多いのです。なぜなら、ほめられることで「何をすればいいのか」がわかるから。できないことに対して叱ったりどなったりするのではなく、できたことを見つけてほめる。これが「ダメなものはダメ」を伝える近道です。
同じことを繰り返してもあきらめないで
1回の注意でやめる子もいますが、それは「いい子」だからではなく、その行為にあまり関心がなかった可能性が。何度言ってもやるのは、「まだやめる時期ではない」ということ。親をバカにしているわけではありません。
「言えばできるのにやらない」は今は仕方がありません
できるというのは、「その時たまたまやりたかった」「気まぐれにできた」ということが多いもの。片づけなどのハードルが高い作業の場合は、楽しくないとできません。自主的にやるのは3歳でもむずかしいものです。
「ダメ」と叱ったあとはいつもどおりに過ごして
叱られてしょんぼりした様子を見て、やさしく抱きしめてあげなきゃ、と思うこともあるかもしれませんが、「叱ったあとは抱きしめる」などとマニュアル的にとらえないで。クドクドと言い続けたりせず、ふだんどおりの態度でいればいいのです。
「ダメ」を伝えるべき3つのシチュエーション
1 危険なことをした時
何が危険かわかっていない場合、そのつど「ダメ」を教えます。道路では大人と手をつなぐ、熱いものにはさわらない、はさみを振り回さない、おはしを持ってウロウロしないなど、その場で伝えましょう。
高いところに登ろうとするなど自分の力を試したい行動は、むやみに制止せず、助けられる態勢を整えながら見守ることも必要です。
2 人を傷つけることをした時
心を傷つけるのも、体を傷つけるのも「絶対にダメ」と教えなくてはいけません。「おまえなんか死ね」と言ったり、人の顔に砂を投げつけたりするような行為は必ずやめさせ、叱ります。
この時期は手が出たり、かみついたりすることもあるので、そばで見守り、やりそうになったら「ダメ」と抱き止めて「お口で言おうね」と伝えて。
3 人に迷惑をかけた時
「人の多い場所で、むやみに走ってはいけない」「お金を払う前の食品を食べてはいけない」「病院で大声を出さない」など、社会の基本的なルールは、そのつど教えたいもの。
守れない場合には「やっちゃダメ!」ときっぱり言って止め、場合によってはその場を立ち去ることも必要です。3歳前後になったらしっかり教えましょう。
「やってはいけない」を伝える時の注意点
何度言っても聞かないと、つい腹が立って感情的になり、怒鳴ったりしてしまうかもしれません。でも、力で抑えつけるしつけは成功しないもの。できるだけ冷静になり、以下の3つのポイントを意識してください。
その場で、すぐに注意する
即座に「ダメ」と注意します。ついさっきのことも忘れてしまうのが2~3歳児。時間がたってから注意しても伝わりません。
確実にやめさせる
遠くから声をかけて注意したつもりにならないで、目を合わせて確実にやめさせます。場合によっては、体を押さえてでも。
短い言葉できっぱり伝える
「なんでアナタは……」とクドクド叱ったり、「かくかくしかじかで」と説明したりは不要。ダメなものは「ダメ」で十分です。