「暗黙の了解」が多い人間社会は、子どもが理解するにはとても複雑。社会のルールはいつ頃、どうやって教えていけばいいのでしょうか?発達脳科学者の成田奈緒子先生に聞きました。
まずは、親自身が社会のルールを守っているか見直して
社会のルールやマナーを教えることは、確かに大切な親の役割です。でも幼児期から「それこそが、しつけだ」と思い込んでいるとすれば、性急といわざるをえません。社会のルールについては、大人になるまでにゆっくりと身につけていくものだからです。
親が「身をもって示す、行動で見せる」ことが大前提
まず意識してほしいのが、言葉より行動のほうが伝わりやすいということです。
たとえば「あいさつをしなさい」と何度も言うよりも、毎朝毎朝、ママとパパが「おはよう」「行ってらっしゃい」と笑顔で言葉を交わすほうがあいさつはずっと身近になります。「交通ルールを守りなさい」と言いながら、「時間がないから!」と信号無視をすることがあれば、子どもは「それもアリなんだな」と思ってしまいます。
子どもは親の姿を見ながら、その行動を「おりこうさん脳」に刷り込んでいくのです。
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ルールの押しつけで「親の顔色」を見る子に
「そうはいっても、電車の中で大声を上げたら、しからないわけにはいきません」という方もいます。
でも、子どもが1歳であれば「静かにしなさい」と言われたとしてもできる年齢ではありません。子どもをしかるのではなく、気を引くおもちゃや絵本などを用意して、なんとかその場を乗り切っていきましょう。
「おりこうさん脳」がしっかり育つと、子どもは言われなくても「ここでは騒いではいけないのだ」と判断できるようになります。「ママも静かにしている。だからぼくもそうしよう」と思います。
でも、脳が育っていないうちに親にアレコレ言われると、判断基準が「親の顔色」になってしまうのです。親が怒れば静かにし、親がいない場所では大騒ぎ、迷うことがあれば常に親に許可を求めてしまう…それでは子どもは自立できません。
子どもらしい動作こそが脳を育てる
今、社会が幼い子どもとその親に向ける目は、とても厳しい時代かもしれません。常に「ちゃんと子育てしてるの?」と言われているかのようです。だからこそ、「世間から責められないように」と、社会のルールをいちばんにしつけようと思ってしまう気持ちもわかります。
でも、子どもというのは本来とても落ち着きがないものなのです。声が大きくて、好奇心旺盛で、うろうろしたり、ぼーっとしたりしているものなのです。
その子どもらしい動作こそが脳をすくすく育て、小学生以降に社会のルールを自分でとり込んでいくための土台づくりをするのです。脳育ての順番さえまちがわなければ、不安に思う必要はありません。
子どもに伝わる言葉で、ゆっくり伝えていこう
もちろん親は子どもの年齢に応じて社会のルールを伝えていく必要があります。でも「すぐにできるようになる」とは思わないことです。
そのうえで、子どもにもわかる言葉で一つ一つ伝えていきましょう。「ダメなものはダメ」ではなく、親自身の価値観をふり返りながら、伝わる言葉を探してみてください。
その姿勢があれば、子どもが思春期や青年期になったときでも、「伝わる言葉」で話し合える親子でいられるのではないでしょうか。
【時期別】社会のルールはいつ頃、どう教える?
赤ちゃん期(0〜2歳):親が調整する時期
この時期はまだ、マナーやルールを守ることはできません。2歳ごろからようやく少しずつできるようになりますが、体調や環境の変化によってできなくなることもしばしばです。親が工夫をして、「ルール違反」にならないように乗り切っていきましょう。
幼児期(3〜5歳):ルールをゆっくり伝える
イヤイヤ期を過ぎる頃が、ルールや価値観を伝えやすい時期です。いっぺんにアレコレ言うのではなく、「スーパーでは走らない」などの目標を決めましょう。お店に入る直前に「今日は走りません」と約束し、約束が守れたらたくさんほめてあげましょう。
児童期(6〜12歳):親の道徳観を伝える
子どもに目が届きにくくなるので、「何時までに帰宅する」「宿題はいつやる」などの家庭のルールを決めましょう。親の意見を一方的に押しつけるのではなく、子どもの考えもとり入れて。親の持つ道徳観も子どもにしっかり伝えつつ、一方的にならないようにしましょう。
思春期以降(13歳〜):お金や人間関係を見守ろう
子どもの世界はどんどん広がりますが、完全に手を離すのではなく、口出しをするのでもなく、ほどよい距離感を持って見守っていく時期です。特に金銭関係と人間関係については注意を払い、何か問題が起きたらすぐ動き、子どもを守ることも必要です。
子どもがルールを守らなかったらどうする?
社会のルールを伝えてきたつもりでも、子どもはときにトラブルを起こすもの。必要に応じて親もお詫びに出向きますが、わが子への過剰な失望はしないことです。
おおらかに受け止め、「何があってもあなたを愛しているよ」と伝えたいものですね。
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