乳幼児期の「脳育て」「育脳」と聞くと、赤ちゃんのうちから早期教育をしたほうが、早く習い事を始めたほうが…と、どうしてもお勉強のことを考えがちですが、実際のところはどうなのでしょうか?小児科医で発達脳科学者の成田奈緒子先生に話を聞きました。
「脳育て」「育脳」には正しい順番がある?
このマンガに書かれているような経験はありませんか?
脳は部位(「からだの脳」「おりこうさん脳」「こころの脳」)によって役割が違うことを
以前の記事でお話しました。
育脳は、「からだの脳」「おりこうさん脳」「こころの脳」の3つをバランスよく育てることが大切なのですが、この3つがいっぺんに育つわけではありません。
「脳育て」というと、私たちはつい「おりこうさん脳」のことだと思ってしまい、真っ先に「おりこうさん脳」を育てようとがんばりがちです。
でも、順番を間違えてはいけません。最初に育つのは「からだの脳」なのです。
最初に育てるべきなのは生命維持の「からだの脳」
「からだの脳」は、首がすわり、寝返りをし、たっちをし…という体の発達や、夜寝て日中は活動する、空腹を感じて食べる、体温を調節するといった、無意識で働く体の機能をコントロールする部分です。
生後すぐから5歳ごろまでに完成するので、まずは「からだの脳」をしっかり育てなくてはいけません。
次に「おりこうさん脳」は、1才過ぎごろから発達し始めます。「まんま」「ワンワン」などの言葉を話し始めたり、スプーンを使って食事できるようになるのは、「おりこうさん脳」のおかげです。
「おりこうさん脳」は1歳から18歳までに育ちますが、発達のピークは6歳から14歳ごろまで。この時期に義務教育が設定されているのは、脳科学的に見ても適切なことといえます。
そして、さらに高度な「こころの脳」は、10歳を過ぎてようやく完成に向かうのです。
「脳は2階建ての家」をイメージして
家に例えると、先に発達する「からだの脳」は1階部分、少し遅れて発達する「おりこうさん脳」は2階部分です。
しっかりした家を建てようと思ったら、まずは1階を頑丈に作り、そのうえで2階を作り始めるはず。1階がグラグラなのに重厚な2階部分を乗せたら、家はたちまち崩れてしまいますよね。そして、思いやりや社会性といった「こころの脳」は、その2つがある程度育ってからでないと発達できません。2階ができないと作れない「階段」のような存在なのです。
最初に育てなくてはいけないのは「からだの脳」だということが分かりましたね。では、どうすれば「からだの脳」は健全に育っていくのでしょうか?次のページでご紹介します。