授乳期間中に赤ちゃんとママが離れなければならないときや、乳腺炎の予防にも役立つのが搾乳です。母乳を保存しておくことで、周りの人たちと母乳育児を分担でき、ママの負担も軽くなります。今回は、そんな搾乳の必要性や、正しい搾乳の方法を解説。母乳ママには欠かせない知識とスキルを身につけて、楽しい母乳ライフに役立てましょう。
現役ママアンケート!搾乳をしたことがありますか?
0~2歳の赤ちゃんを持つ現役ママにアンケートをとったところ、搾乳の経験がある人は6割以上。搾乳をするタイミングや理由としては、以下のようなコメントが代表的なものでした。
Q.どんなときに搾乳をしていますか?
赤ちゃんが飲まない時間帯に母乳を冷凍保存「母乳の出は、さほどよいほうではないのですが、ときどき赤ちゃんがぐっすり寝てしまって、胸がパンパンになることが。そんなときは電動搾乳器でしぼり、専用の母乳フリーザーバッグで冷凍しておきます。母乳が足りない!というときに、温めて使えるので、それほどミルクに頼らずにほぼ母乳だけで育児できています」(0歳8ヶ月女の子のママ)
母乳の分泌量を減らさないため「出産後しばらくの間、母乳が足りないように感じていました。こまめにタンクを空っぽにすると母乳が増える、と助産師さんから指導を受けて、赤ちゃんがねんねしていて授乳時間が開いてしまったときや、授乳後にも念のため手で搾乳していました。そのおかげか、3ヶ月くらいからは赤ちゃんが満足してくれる程度に母乳が出るようになりましたよ」(0歳6ヶ月男の子のママ)
職場復帰時に胸の張りを軽減「産後10ヶ月から職場復帰したので、卒乳の準備を事前にすすめていました。赤ちゃんは卒業できたのですが、私の母乳がまだまだ出続けていたため、胸が張ってしまって……。つらくなるとトイレで搾乳することに。大変でしたが、乳腺炎になることもなく、なんとか乗り切れました!」(1歳6ヶ月女の子のママ)
そもそも搾乳とは?
ママが自分で母乳を搾ることを「搾乳」といいます。直接母乳を与えられないとき、赤ちゃんと長時間離れなければならないとき、母乳育児を続けるためのセルフケアとして、その方法を覚えておくと便利。方法としては、手で直接搾る方法と、搾乳器を使用する方法があり、搾乳器には電動と手動の2タイプがあります。
搾乳って必要?どんなメリットがありますか?
赤ちゃんと離れていても母乳育児ができる
母乳を作り続けるためには、乳頭に刺激を与えることが大切。なんらかの理由で、赤ちゃんの退院が遅れたり、早いうちから保育園に預けて直接母乳を飲ませる機会が少ない場合は、自宅で搾乳をし、病院や保育園に届けることで母乳育児を続けることができます。
バストのトラブル時などのセルフケア
母乳育児に慣れない間は、赤ちゃんもまだ上手に吸うことができなくて、乳頭に傷がついてしまうことがあります。直接飲ませると痛みを感じるなら、搾乳して飲ませるのもおすすめです。また乳頭が陥没しているなどの原因で、赤ちゃんがうまく飲めないケースでも、搾乳を勧められることがあります。
母乳の出すぎ&足りないときに必要
正しい乳頭刺激が行われ、母乳が分泌排乳されると刺激に応じて母乳量が増減します。作り過ぎてしまう人は、搾乳により刺激しすぎないように気をつけましょう。
また、母乳が足りないと感じている場合は、乳首の吸い付かせ方(ラッチング)や抱く姿勢(ポジショニング)がうまくいっていないことがほとんどです。吸い付き方や含ませ方の問題で、正しく刺激が送られていない場合があり、その場合は搾乳により母乳分泌アップを期待できます。
母乳を作りすぎてしまうタイプの人は、胸の張りが軽くなる程度に搾乳するとよいでしょう。足りないと感じている人は、授乳のあとにも念のため搾乳したり、授乳の間隔が長くなりそうなときは途中で搾乳するようにします。
搾乳回数の目安をおしえて!
搾乳の目的によって、搾乳の回数は異なります。たとえば、赤ちゃんが小さく生まれて母乳を届ける場合、出産後2週間頃までは1日に8~10回、母乳が順調に出るようになれば6~7回。間隔を6時間以上空けないことで、母乳の分泌量が減らないと言われています。厳密になりすぎず「だいたい3時間おき」と考えてもよいでしょう。
つまっている感じがある場合は、できるだけ頻繁に赤ちゃんに飲ませ、張ってると感じたら搾乳してうっ滞を防ぎます。多く出すぎるタイプのママは、搾乳時に搾りきらないようにすることが重要。頻繁に、毎回搾りきってしまうと、母乳の生成がさらに増えてしまいます。
【手法別】正しい搾乳方法
手による搾乳方法
清潔なお椀やボウルさえあれば、いつでも母乳を搾れる方法です。母乳を受ける容器は生後1ヶ月までは消毒しますが、それ以降は清潔に洗ってさえあれば、消毒しなくても問題ありません。また、搾乳した母乳を保存しない場合は、タオルに吸い取ったり、お風呂場で搾ってそのまま流してしまえばOK。赤ちゃんのことを思いながらリラックスして行うと、射乳反射が起き、母乳が出やすくなると言われています。
〈手で搾乳する方法・手順〉①乳頭刺激まずはママの手をきれいに洗います。母指、人指し指、中指の3本で乳頭を垂直に挟み、ゆっくり圧を加えます。位置をずらしながらまんべんなく圧迫し、乳頭をやわらかくほぐします。搾乳器を使用する際も、その前に乳頭をやわらかくしておくと、搾乳しやすくなりますよ。
②乳輪付近を圧迫乳頭が柔らかくなったら、3本の指で乳輪付近を挟み圧迫。個人差はありますが、乳頭から親指のひと関節分ほど内側に、母乳を一時的にためる「乳管洞」が多くあるので、そのタンクまで柔らかくほぐすイメージです。胸壁(肋骨の方向)に向かって押す感覚を意識しながら、少しずつ指をずらしてまんべんなく圧迫していきます。
③一箇所搾れたら、次の箇所へ移動乳頭乳輪が柔らかくなったら、手のひらと母指でCの形を作り、ゆっくり乳房に圧を加えます。しこりがあるときは、そちらの胸から搾乳しましょう。両方にあるときは、張っているほうの乳房から始めます。しこりと乳頭をつなぐ線上に母指、反対側に四指をあてて軽く圧迫します。じゅうぶん搾乳できたら、次の箇所へと移動します。
乳頭に向かってしごいたり、強く圧迫するのは避けましょう。乳腺が傷ついてしまいます。
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手動搾乳器での搾乳方法
手動搾乳器とは?手動搾乳器とは、自分でハンドルやポンプを握ったり離したりして、母乳を搾る道具のことです。特徴としては以下のようなことが挙げられます。
・電動搾乳器より安価
・コツをつかめば、手搾りより短時間に簡単に搾れる
・うまく使いこなせない、効果的に搾れない人もいる
・手動なので、搾る強さや角度などを調整しやすい
・分解して洗浄しやすい
・使う頻度がそれほど高くない人向け
〈手動搾乳器で搾乳する方法・手順〉①乳頭刺激まずはママの手を石鹸できれいに洗います。搾乳器も清潔に洗浄しておきましょう。手で搾る場合と同様、乳頭を刺激してやわらかくしておきます。
②胸にカップをあてる片方の手でバストを安定させながら、乳頭に向かって垂直にカップをあてます。
③手動で搾乳するバーを握ったり離したりすると、母乳が出てきます。
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搾乳した母乳の保存方法や期間は?
搾乳した母乳の保存方法
いずれの方法で搾乳した場合も、すぐ飲ませる場合は哺乳瓶で飲ませます。保存する際は、専用の母乳パックなどを利用して冷凍しておくのがおすすめです。母乳パックとは、安全性の高いポリエチレンなどを素材として採用した保存用の袋のこと。母乳の量がわかるようにメモリが付いていたり、日付や名前を記載できる商品もあります。搾乳器に取り付けられるタイプなら、他の容器を洗ったりする手間もなく、搾ってそのまま冷凍できて便利です。
母乳パックについては、以下の記事も参考にしてみてください。
搾乳した母乳の解凍方法
37℃の流水解凍、もしくは冷蔵庫でゆっくり自然解凍し、40度以下のぬるま湯で温めます。この方法であれば、免疫や成分はほとんど変化しないため、赤ちゃんに安心して与えられます。一方、電子レンジで温めたり、母乳を沸騰させるのはNG。赤ちゃんにとって最もたいせつな、栄養分が破壊されたり、変質してしまうこともあります。
搾乳した母乳の保存期間
冷凍する温度などにもよりますが、メーカーによっては3~4週間以内に使い切るのが理想としています。また解凍した母乳を冷蔵保存できるのは24時間以内。長期的に冷蔵すると、栄養的・免疫的な質が損なわれる可能性がありますので、なるべく早く新鮮な状態で赤ちゃんに飲ませてあげてください。以下に、(公社)日本助産師会「赤ちゃんとおかあさんにやさしい母乳育児支援ガイド」による、冷凍母乳保存期間の目安を掲載します。
母乳の冷凍保存期間(-20℃の場合)
・健康な正期産児:6ヶ月以内(3ヶ月以内が理想)
・早産児NICU入院児:3ヶ月以内(1ヶ月以内が理想)
搾乳しても母乳の量が出ない!原因ってありますか?
搾乳したときに出が悪いと、「母乳の量が少ないのでは?」と感じるママもいるのではないでしょうか。でも乳汁が作られる量と、赤ちゃんが飲む量のバランスがよい場合は、搾乳してもあまり出ませんので、慌てる必要はありません。
また、ごく初期の段階、産後1~3日めは、母乳の通り道が開通していないため、搾乳してもほとんど母乳が出ません。他のケースとしては、「手搾りの際に指のあて方がよくない」「血行が悪い」「水分が不足している」などの理由で、母乳の量が少なくなることがあります。
搾乳しても母乳の量が少ないときの対処法が知りたい!
母乳の量が少ない原因はいろいろ考えられます。原因によって対処方法が異なりますので、ここでチェックしておきましょう。
赤ちゃんが飲む量と母乳量のバランスがよい
需要と供給のバランスがよい、母乳育児の理想的な形です。特に対策は必要はありません。搾乳するのも、赤ちゃんに飲ませられないときだけでじゅうぶんでしょう。
出産して間がなく母乳生成量が少ない
乳腺が空になることで信号が出て母乳が作られますので、搾乳の回数を増やすことも有効です。赤ちゃんに飲ませることができない状況であれば、3時間おきを目安に搾乳してみるとよいでしょう。
水分不足による母乳の減少
夏季でなくても、母乳育児中のママは体温が高く、予想以上に汗をかいています。母乳は血液から作られるため、体内の水分不足は母乳不足に直結!水分は最低でも1日2リットル摂りましょう。授乳の前にコップ1杯、食事のたびに1~2杯飲むとクリアできる量ですが、夏場や授乳で汗をかいたときは、より積極的に摂ることをおすすめします。
体の冷えによる母乳不足
体が冷えると血管が収縮して、血液から母乳が作られづらくなります。温かい飲み物を飲んだり、巡りがよくなるようマッサージしてもらうのもよいでしょう。