妊娠中に起こるトラブル。早く症状に気づけば、防げたり、悪化させたりずにすむトラブルもあります。自分には無関係と思わず、妊娠したら予備知識として頭に入れておくと安心。妊娠初期・中期・後期でどんなトラブルがあるのかを、産婦人科医の天神尚子先生に聞きました。
①切迫流産
【初期】妊娠22週未満で、流産の兆候があるものの、流産には至っていない状態が切迫流産です。自覚症状は生理痛のような下腹部痛や、激しい下腹部痛、出血など。胎児の心拍が確認されていれば、妊娠を継続できるケースもあります。
②妊娠糖尿病
【初期・中期・後期】血糖値が高くなるなど、妊娠によって糖尿病の症状が出ます。妊娠中だけの一時的な病気ですが、妊娠高血圧症候群や流・早産、羊水過多などにつながりやすいので要注意。初期のうちのほとんどは自覚症状がありません。
③感染症
【初期・中期・後期】かぜに代表されるように、体の中にウイルスや細菌などが入り込み、発熱や発疹、炎症などを起こすものを「感染症」といいます。最近ではセックスでうつる性感染症も増え、なかには赤ちゃんに影響を及ぼすものもあります。
④貧血
【初期・中期・後期】妊娠中は赤血球をつくるヘモグロビンが11g/dl以下、ヘマトクリット値33%以下を貧血と診断します。貧血になると体が酸欠状態になり、疲れやすくなったり、めまいや動悸、息切れなどの症状が出やすくなります。
⑤羊水過多症
【初期・中期・後期】羊水量は最も多いときでも約800mlになりますが、妊娠週数を問わず800mlを超え、腹痛や呼吸困難などの自覚症状を伴う場合、羊水過多症と診断されます。中期以降に発症すると早産、前期破水、妊娠高血圧症候群などのリスクを伴います。
⑥羊水過少症
【初期・中期・後期】一般的に羊水量が100ml以下の場合を羊水過少といい、羊水過多症と同様、妊娠中期に発症すると流産しやすく、後期だと早産の危険が高まるといわれています。原因はほとんどの場合不明ですが、中期で生じるものには染色体異常を伴うことが多いです。
⑦胎児発育不全(FGR)
【中期・後期】母体や胎児、胎盤などのなんらかの原因でおなかの赤ちゃんの発育が遅れ、妊娠週数に相当する胎児の標準体重よりも−1.5SD以下の小さい場合をいいます。妊婦さんの3~7%に見られるといわれ、診断されるのは妊娠7ヶ月ごろからです。
⑧切迫早産
【中期・後期】妊娠22週以降37週未満で早産の兆候があり、近いうちに早産になる可能性が高い状態をいいます。下腹部痛や出血、破水などの自覚症状がある人も、子宮収縮に気づかないケースもあり、内診や超音波検査などで診断されます。
⑨胎児胎盤機能不全
【中期・後期】妊娠中期ごろから起こることがあり、胎盤の働きがうまくいかなくなる状態をいいます。機能が低下すると、おなかの赤ちゃんに十分な栄養や酸素が届かなくなるため、陣痛促進剤の投与や、帝王切開で妊娠を中断する処置がとられます。
⑩逆子(骨盤位)
【中期・後期】通常赤ちゃんはおなかの中で頭を下にしていますが、頭が上になっている状態が逆子。妊娠中期ぐらいまでは逆子になっていることも多く、自覚症状はとくにありません。超音波検査や触診、内診などで診断されます。
⑪妊娠高血圧症候群
【中期・後期】妊娠高血圧症候群は妊娠20週以降、産後12週までの間で高血圧の症状が見られること、高血圧+タンパク尿が出ていることにより診断されます。自覚症状はない場合がほとんどですが、妊婦さんの5%に見られます。
⑫静脈瘤
【中期・後期】大きな子宮に血管が圧迫されて血流が悪くなり、静脈がふくらんでこぶになることを静脈瘤といいます。たいていはお産が終わると自然に治りますが、外陰部にできた場合、出産時に出血することがあり、注意が必要。
⑬前置胎盤
【中期・後期】子宮底にあるべき胎盤が子宮口の全部、または一部をふさいでいる状態をいいます。最初は無痛性の出血が見られることが多いのですが、通常は妊娠20週ぐらいまでに超音波検査で発見され、妊娠中期には診断されます。
⑭常位胎盤早期剥離
【中期・後期】赤ちゃんがおなかにいる間に胎盤がはがれてしまうこと。胎盤の一部がはがれることもあれば、完全にはがれる場合もあります。急速に進行し、母子ともに危険な状態になることも少なくなく、緊急帝王切開になるので診断は一刻を争います。
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