寒い時期、赤ちゃんがかかりやすい感染症の一つが、ロタウイルスやノロウイルスなどのウイルス性胃腸炎です。どちらも晩秋から春先にかけて患者が急増。感染力が非常に強いうえ、感染すると症状が重くなりやすい病気です。
万一かかったらどう対処するべきか、そもそも感染しないためにはどうしたいいのかを、済生会横浜市東部病院小児科医長、十河剛先生にうかがいました。
ノロ・ロタともに複数回感染することも!
胃腸がウイルスに感染して起こる急性の胃腸炎(いわゆる、おなかのかぜ)をまとめて、ウイルス性胃腸炎といいます。中でも冬に多いのが、ロタウイルスとノロウイルスが原因の急性胃腸炎。
感染力が強いため、保育園や幼稚園ではあっという間に広がりますし、子どもからパパ・ママ・きょうだいにうつることもよくあります。また、ウイルスの種類が何種類かあるので、一度かかっても再びかかることがあります。
寒い時期に流行しますが、ノロとロタでは多少時期がずれています。初秋から増え始めて真冬にピークとなるのがノロ、真冬から春先まではやるのがロタという傾向です。
ただし、最近は季節性がなくなってきていて、どちらも5月ごろまで見られるように。いずれ、寒い季節にかかるとは限らない病気になるかもしれません。
除菌スプレーや日光消毒ではウイルスは死滅しない
ウイルス性胃腸炎にかかるとウイルスが小腸で増えて粘膜を壊すため、症状の中心は激しい下痢と嘔吐です。水のような便がおむつからもれるほど出たり、1日10回以上出たりすることもあります。
赤ちゃんは腹痛のため不機嫌になったり、食欲が落ちたりします。ロタウイルスに感染すると、白っぽい色の便が出るといわれていますが、必ずしも便が白っぽくなるとは限りません。
症状や重症度はどちらも大差ないのですが、感染力が圧倒的に強いのはノロウイルスです。感染者が嘔吐して床などに飛び散ったノロウイルスは乾燥しても生き続け、それが舞い上がって別の人の口に入って感染が広がります。ほんの10個のウイルスで感染するといわれるほどの感染力です。
ノロウイルスもロタウイルスも、除菌スプレーや除菌ジェル、日光消毒では死滅しません。ウイルスのついた衣服や床は、85度以上のお湯に1分以上つけるか、塩素系漂白剤(商品名・ミルトン、ハイターなど)で拭くなどする必要があります。
吐いたものや便の始末には細心の注意を!
ノロやロタウイルスに感染した場合の吐瀉物や便は、想像以上に広範囲に飛び散っているもの。掃除をする際には、以下の点に注意をして、二次感染しないようにしましょう。
マスク・手袋・エプロンで防護
素手で処理するのは絶対にやめて!マスクや手袋はもちろん、できればエプロンも使い捨てにします。
床に吐いたときはしっかり始末して
嘔吐物を処理するときは、まずビニールなどで包み込んで捨ててから、布でしっかり床を拭きます。このとき、床に触れたスリッパや靴下も捨てましょう。そのうえで、吐いた部屋全体を次亜塩素酸ナトリウム液で拭いてください。また、処理に使ったものはすべてビニール袋に入れて密封し廃棄を。
※次亜塩素酸ナトリウム液=水500ml+ハイター・ミルトンなどの塩素系漂白剤10ml
洋式トイレはフタを閉めて水を流す
感染した赤ちゃんや家族の便をトイレに捨てるときは、必ずフタを閉めて水を流しましょう。開けたまま水を流すと、便の中のウイルスが飛散する恐れがあります。
下痢が2週間以上続くときは必ず受診を
ウイルス性胃腸炎の特効薬はなく、脱水症を起こしていなければ特に治療はしないで自然に治るのを待ちます。症状のピークは吐きけが半日~1日、下痢が1週間~10日ほどで、体がしっかりと元どおりになるまでの目安は2週間です。
ウイルス性胃腸炎で腸の粘膜の表面が破壊されると、乳糖を分解・吸収できなくなることがあります。そのため、ウイルスがいなくなったあともミルクに含まれる乳糖が分解されず、下痢が続くことがあります。下痢の症状が長引き2週間以上続くときには、念のために受診しましょう。
大量の下痢や止まらない嘔吐は要注意!
体内の水分や電解質が極端に不足した状態になると、ひどい場合は命にかかわることも。これが、脱水症です。
ウイルス性胃腸炎にかかって下痢や嘔吐が続くと、体内の水分と電解質がどんどん失われていきます。特に、下痢と嘔吐が同時の場合は、短時間で脱水が進んでしまう危険が高いのです。
水分が不足しているときのわかりやすいサインは、おしっこが減ることです。さらに脱水が進むと口の中が渇いてネバネバしたり、汗をかきにくくなったりします。手足は冷たくなりますが、これは、体内の水分が足りないために血流が悪くなり、末端まで血液が行き届かなくなったということです。
こうなると、脱水はかなり進んでいます。元気がなくなりぐったりしてきたら重症ですから、至急病院へ行く必要があります。
受診の目安になる症状は?
おっぱいやミルク、食事がふだんよりとれていない
↓
①時間とともに顔色や口の中の乾燥の様子が悪化する
➁不機嫌であやしても落ち着かない、ずっと泣いている
③ずっとウトウトしている
④目が落ちくぼんでいる
⑤呼吸が速い、呼吸が荒い
⑥手足が冷たくなっている
↓
【①~⑥の症状がある場合】●経口補水液を飲ませることができれば、飲ませながら受診
●経口補水液を飲ませることができないときは、すぐに受診を。場合によっては救急要請!
【①~⑥の症状がない場合】そのままで様子を見て、おしっこの量が減る、口の中が渇くなどの様子が見られたら、経口補水液をこまめに与える
※ただし、症状が出たら受診を。
「ちびちび飲み」で早め早めの水分補給を
脱水症を予防するには、何より水分補給です。下痢や嘔吐がひどく、飲んだり食べたりできない場合は、とにかくこまめに水分を与えます。
飲ませるのは水分と電解質を効率よく吸収できる経口補水液が最適。嘔吐がひどくて一度にたくさん飲めないときは、ティースプーン1杯(約5㎖)を5分おきに飲ませましょう。スポイトやペットボトルのフタを利用するのも〇。
吐きけのある間は飲ませないとされてきましたが、たとえ吐いても「ちびちび飲み」で少しずつでも水分を補給したほ
うがいいことがわかってきました。嘔吐がおさまってきたら、飲ませる間隔を短くしていきます。
経口補水液で脱水状態が改善されたら、授乳や離乳食を再開してかまいません。離乳食を一段階戻す必要もなく、いつもどおりの内容で早く再開したほうが、食べられなくて減ってしまった体重の戻りも早いことがわかっています。
ロタウイルスの予防にはワクチンが有効!
ロタウイルスにはワクチンがあります。もちろん感染を防ぐのが目的ですが、ウイルスが何種類かあり、ワクチンの型とぴったり合うとは限らないため、予防接種をしてもかかってしまうことがあります。
とはいえ、予防接種をすれば、しなかった場合よりも病気が軽くすみ、重症化しにくいことがわかっています。また、自分が住んでいる自治体から補助が出ることが少なくありません。受けられる時期になったら早めに接種して、積極的に防いであげたいですね。
ロタウイルスワクチンについて
生後6週から接種できますが、ほかのワクチンとの同時接種を考えて生後2カ月から、初回を14週6日までに接種することが推奨されています。
ロタウイルスワクチンは、月齢が高くなってから接種すると、腸が重なり合ってふさがる「腸重積」を起こしやすいのです。低月齢のうちに接種するよう、期間が決まっています。
2回摂取と3回摂取のワクチンがありますが、予防効果はほぼ同じとされています。どちらを受けるかは自分で決めることができます。ただし、医療機関によってはどちらか1種類しか扱っていないこともあるので、事前に確認を。
●生後6週間から受けられる
●4週間隔で2回または3回接種
●2回接種のワクチンは生後24週までに接種を終わらせる
●3回接種のワクチンは生後32週までに接種を終わらせる
●注射ではなく飲むワクチン
●同時接種できる
ウイルス性胃腸炎に関するQ&A
Q.ウイルス性胃腸炎でけいれんを起こすって本当?
A.けいれんを起こし、短時間で数回くり返すことがあります。原因は不明ですが、後遺症の心配はまずありません。けいれん後に受診しますが、5分以上続くようならすぐに救急車を呼びましょう。
Q.一度かかればもうかかりませんか?
A.ウイルスの種類は複数あるため、一度かかっても、免疫を持っていない別の種類のウイルスに感染することがあります。特にノロウイルスは感染力が強く、何回もかかる場合が。
Q.ウイルス性胃腸炎の便は必ず白っぽくなるの?
A.胃腸炎にかかると白っぽい便が出ることがありますが、なぜそうなるのかはよくわかっていません。便の色だけでウイルス性胃腸炎かどうかを判断することはできません。
Q.熱がなければお風呂に入れてもいい?
A.赤ちゃんが元気なら、多少熱があってもお風呂に入れてかまいません。下痢で汚れたおしりも、きれいにしてあげたいですね。ただ、便の中にはウイルスがいます。しっかりと洗い流し、家庭内感染に注意しましょう。
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赤ちゃんが新型コロナウィルスに感染!?もしもの時のために知っておくべきこととは?【小児科医監修】取材・文/村田弥生 イラスト/もり谷ゆみ
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