発熱中、突然体が硬直し、白目をむいてピクピクふるえる…!子どもが熱性けいれんを起こしたら、あなたは冷静に対処できますか?ただならぬ様子に、パニックを起こすパパ&ママも少なくないのでは。
3ヶ月~6歳未満の場合、熱性けいれんを起こす子どもは珍しくありません。いざという時にあわてないよう、正しい知識を身につけておきましょう。済生会横浜市東部病院・十河剛先生にお話をうかがいました。
熱の上がり始めに起こるひきつけ。5%の子が経験!
「けいれん」とは、筋肉が自分の意思とは関係なく収縮する状態のことで、「ひきつけ」ともいいます。けいれんは何らかのきっかけで脳神経が異常な興奮状態になり、それが全身に伝わって起こります。
赤ちゃんに多いのは「熱性けいれん」です。これは名前のとおり、38度以上の発熱がきっかけで起こるけいれんで、3ヶ月以上6歳未満の子どもに見られます。大人が熱性けいれんを起こすことはありません(もし大人がけいれんを起こすとしたら、他の病気が原因)。
乳幼児は脳の神経発達が未熟なため、熱による刺激で脳神経に異常な興奮が起こるのではないか、と考えられていますが、なぜ起こるのか正確にはわかっていません。該当する年齢の5%ぐらいが、熱性けいれんを経験します。
熱性けいれんを起こすと、子どもは白目をむいて一点を凝視したり歯をくいしばったりし、手をかたくにぎりしめて足をつっぱり、体を弓なりにし、息を止めたような状態になります。その後、手足をピクピクとふるわせることもあります。
5分以内におさまれば大丈夫。起こしやすい子も!
赤ちゃんが熱性けいれんを起こすと、その様子が衝撃的なために、ママやパパは「死んでしまうのではないか!?」と不安になるようです。
でも、単純型の熱性けいれんなら、亡くなったり合併症を起こしたりすることはまずありません。ですから、熱性けいれんでは、特に治療しないことも多いのです。
単純型の熱性けいれんには、いくつかの特徴があります。
●5分以内におさまる。●けいれんの様子が左右対称。●おさまったあとはケロリとしているか、スヤスヤ眠ってしまう。などがそれ。ただし、けいれんにはさまざまな原因や経過があるので、初めてのけいれんのあとは、必ず早めに受診してください。
熱性けいれんの原因は体質的なものではないかともいわれ、両親のどちらかが熱性けいれんを起こしたことがある場合は、赤ちゃんも熱性けいれんを起こす可能性が高くなります。
また、「熱性けいれんを一度起こすとくり返す」というのは誤解です。最初のけいれんがきっかけになるわけではなく、体質的にくり返しやすい子が何度も起こすのです。
熱性けいれんをくり返しやすいタイプは?
●両親のどちらかが熱性けいれんを起こしたことがある●1歳未満で熱性けいれんを発症した●39度以下の発熱で熱性けいれんを発症した●発熱から1時間以内に熱性けいれんを発症した熱性けいれんを起こした赤ちゃんで、両親どちらかが熱性けいれんを起こしたことがある場合の再発率は約50%。1歳未満での発症、39度以下での発症などでも再発率が高まります。
熱性けいれんが起きたらこうする!
赤ちゃんが初めてけいれんを起こしたときは、まず時間をはかります。はかりながら衣服をゆるめ、顔を横に向けて吐いたものをつまらせないようにしましょう。
けいれんがどんな様子かも、よく見ることが大切です。体のつっぱり具合、両手・両足のふるわせ方や黒目の動きなど、左右対称かどうかがチェックポイントです(目玉や体の動きが左右対称なのが熱性けいれんの特徴)。
けいれんの様子は、「熱性けいれん」かどうかの確定診断の助けになります。気持ちに余裕があれば、スマホで動画を撮って医師にみせましょう。
チェックPoint
●左右対称のけいれんか、左右非対称のけいれんか●固まっているのか、ピクピクふるえているのか●目がどちらの方向を向いているのか●呼びかけにこたえるかけいれんが5分以内におさまれば、あせらなくても大丈夫。呼吸が落ち着いていることを確認し、早めに病院へ行きましょう。初めてのけいれんのあとは、夜間でも救急外来へ行き、熱性けいれんかどうかをみてもらってください。
けいれんが5分以上続くときは、ためらわずに救急車を呼びましょう。けいれんの原因がなんであれ30分以上続くと脳に障害が出る恐れがあり、30分以内に治療を開始する必要があるからです。病院到着までにけいれんが止まっても、念のため救急搬送してもらいましょう。
けいれん中にコレやっちゃダメ!
●口にものを入れる
●ゆさぶる口にものを入れると、舌をのどの奥に押し込んで窒息する危険があります。けいれんの原因が熱ではなく、頭蓋内出血などのこともあるので、激しく体をゆさぶるのもやめましょう。
熱性けいれんに関するQ&A
Q.熱性けいれんのあと、眠りこんでしまいました。起こさなくていい?
A.スヤスヤと眠っているようなら心配ないので起こさなくてOK 単純型の熱性けいれんの場合、けいれんが止まったあとに疲れてグッスリ眠りこんでしまうことがあります。その場合は無理に起こさず、眠らせてあげましょう。初めての熱性けいれんの場合は、起きるのを待たずに病院へ。
Q.熱性けいれんの予防薬はあるの?
A.繰り返しやすいタイプの子にはけいれん止めを使うことも一度熱性けいれんを起こすと1~2年以内に再発しやすいので、けいれん止めの座薬が処方されることがあります。熱性けいれんは予防しなくてはいけないものではありませんが、見ていてつらい気持ちになる親御さんは多く、医師の指示があった場合は予防的に薬を使うのも悪いことではありません。
日本小児神経学会では、予防的に座薬を使うべき基準を示しています。けいれん予防の方法としては37.5度以上になったらけいれん止めの座薬を入れ、下がらなければ8時間後に再度薬を入れることを推奨しています。
Q.熱性けいれんを起こさないように、解熱剤を使ってはいけませんか?
A.医師により使用方針は違うので、かかりつけ医に確認を解熱剤を使うと、薬が切れてまた熱が上がるときにけいれんを起こす心配があります。また、抗けいれん薬と解熱剤を併用するかどうかなどは医師によって方針が違うことがあるので、かかりつけ医に相談して確認してください。
Q.何度もけいれんをくり返すと、体に負担では?
A.複雑型けいれんの場合はくり返すと負担になることも単純型熱性けいれんの場合は、くり返してもそれほど心配はいりません。けいれんが5分以上続く場合は要注意。何度もくり返すと脳に影響する複雑型である可能性がないとはいえませんし、てんかんの初期というケースもあります。
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赤ちゃんの「発熱」。受診が必要なケースは?症状別ホームケアのポイントも【小児科医監修】取材・文/村田弥生 イラスト/もり谷ゆみ
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