食育のために子どもにも料理をさせたい。そう思っているパパ&ママも少なくないのでは。今回は、親子料理研究家のいしづかかな先生に取材。親子料理を始めるための注意点やポイントを教えていただきました。
実は、近ごろ話題の「モンテッソーリ教育」の教師でもあるいしづか先生。大人が環境を整えることによって、子どもの中にある意欲や好奇心を満たし、自ら考え行動できる力を育む教育法がモンテッソーリです。いしづか先生は、そんなモンテッソーリの理念を、料理を通して多くの親子に伝えています。
➤➤「食」で子どもの生きるチカラを育む!モンテッソーリ流「食育」とは?では実際、家庭で子どもに料理を教えるためには、どうすればいいのでしょうか?注意すべきポイントとは?
子どもと本当に密に過ごせる0~4歳の間にチャレンジを
▲肩ひじ張らない食育を提案するいしづかかな先生 「幼児に料理なんて無理でしょ?」と思われがちですが、実は発達のレベルによってできる作業はたくさん。「危ないから」と、普段は子どもをキッチンに入れないようにしているお宅もあるかもしれませんが、それはもったいない!
0歳だってOK。料理にまつわるさまざまな動作(にぎる、こねる、ちぎる、すくう、ビンのふたを回すなど)は、手指のトレーニングにも繋がります。「にぎる」ができるようになれば、一緒におにぎりだって作れてしまうのです。
親子料理を始めるのは何歳でも構いませんが、0~4歳くらいが最も濃密に親子でコミュニケーションをとれる時期。その親子時間の一環として、自然に親子料理を始められるとベストかなと思います。
各ご家庭で、子どもの年齢に合わせて、無理なく、できることからトライしてみてください。以下にご紹介する年齢別の作業を参考に、お子様の興味や発達に合わせた作業を準備してみてください。
0歳
●物を取り出す
●ボウルや鍋に、つかんだものを入れる
●柔らかいものをちぎる、ほぐす
▲しいたけをちぎってざるに並べ、干ししいたけ作り。乾いたかどうか触ってみると感覚も豊かに。
1歳~1歳半
●バターナイフで柔らかいものを切る
●スプーンですくって移す、かける
●水を注ぐ
2歳~3歳
●おだんごをこねる、丸める
●はさみ、すりこぎ、マッシャーなどの道具を使う
●クッキーの型抜き
▲かぼちゃの種を爪切りでパチン! 中身を取り出しておやつに。3~4才からできます
4歳~5歳
●計量をする
●包丁や火を使って調理する
●流れのある作業ができれば、自分だけで1品が完成!
もちろん、こうした作業をしなくても、お母さんの横で見ているだけでも、子どもの好奇心は刺激され、様々なことを吸収し、学んでいきます。あくまで子どもの「やってみたい気持ち」に合わせて実践していけるといいですね。
安全で使いやすい環境づくりのための5つのポイント
子どもとキッチンに入る時には収納や道具にちょっと工夫をするなど、子どもが安全に作業できる環境づくりをすることが楽しむコツです。また、ケガや散らかりを防ぐためのルールをしっかり伝え「キッチンでのお約束」を守れるようにしていくことも大切です。
具体的にはどうしたらいいのか、「はじめの一歩」にどの年齢のお子さんにもおすすめの工夫をご紹介します。
1 開けてもいい引き出しをつくる
「子どもがキッチンの引き出しを勝手に開けて困る! 」という声をよく聞きますが、それなら「開けていい引き出し」を作ってみては。
その中にはボウルや乾物など、軽くて割れない安全なものを入れておきます。子ども用の食器やカトラリー、ランチョンマットなどを入れておき、自分で配膳してもらうのもgood。
開けられる引き出しがあれば、中を見たい、ものを出したいという欲求が満たされます。同時に「ここは開けたらダメだよ」というルールを教えることもできます。
▲「開けていい引き出し」は子どもの手が届きやすく、中を覗き込める高さに
2 乾物やふりかけをビンに移し替える
つまむ、すくうといった動作ができるようになったら、自分でふりかけやかつおぶしなどをかけられます。
その時、袋のままだとこぼす原因に。ジャムなどの口が広い空きビンに移し替えておけば、指でつまんだりスプーンですくったりがラクにできます。
▲ビンに入っていれば大人も使いやすく、一石二鳥です
3 子どもサイズの道具を用意する
調理道具は子どもの手でも扱いやすいサイズがベスト。100 円ショップや雑貨屋さんでも探すことができます。ただし包丁はしっかりと選びましょう。
▲柄が太くてにぎりやすいバターナイフは3COINS。使いやすくておすすめ!包丁はきちんと「切れる」ことが重要です。
4 作業する場所にはマットを敷く
調理作業をする時にはランチョンマットやキッチンクロス、新聞などを敷いて、「ここで作業するんだよ」というスペースを作ります。
これはモンテッソーリ教育でも取り入れられていて、自分の作業スペースを明確にする効果があります。
マットの上にまな板やボウルなどを配置することで、右→左、上→下に使うと作業しやすいなど、手順を視覚的に把握する力や空間認識力も身につきます。
▲動きやすい物の配置が、子どもの作業を手助けしてくれます。
5 子どもが調理しやすい工夫も
幼児もチャレンジしやすいおにぎりですが、ごはんが手にくっついたり、ラップだと扱いにくかったり。
そこでおすすめなのが濡らしたふきんに包む方法。そのとき「ごはんを置く場所」と「両端をつまむ場所」に目印をつけることがポイントです。
濡らしたふきんを絞ったり、ごはんをギュッとにぎるといった作業は、手の発育に効果的。感覚刺激が大好きな子どもたちは楽しんでやりたがります。
▲糸で目印をつければ、どこにごはんを置いてどう包むか一目瞭然! 6歳の息子さんの手つきは慣れたものです。
親子料理教室では子どもの成長に涙するママが続出!
私が主宰する親子料理教室「デキタヨ!」には、0歳から6歳までの子が参加していて、料理をするのは子どもたち自身。
自分たちだけで準備や調理をしているのを見て、「まだ赤ちゃんだと思っていたのに、こんなにできるなんて…」と感動されるママもたくさんいます。
そして、たくさんの子どもたちと料理してきて断言できるのは「子どもはみんな料理が好き」ということ。
子どもには「やってみたい、知りたい」という発達欲求や好奇心があるのですが、料理はそれを満たしてくれるんです。
お外遊びが嫌いな子がいないのと同じように、料理はすべての子どもが楽しめる遊びです。ぜひ、その背中を押してあげてください。そして、今しかできない子どもとのコミュニケーションを目いっぱい楽しんでくださいね。
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➤➤「食育にピッタリ!簡単レシピ」動画今回お話をうかがった、いしづかかな先生発の子どもと一緒に楽しく作れる「おむすびレシピ4種」を動画でご紹介しています。ぜひ親子でトライしてみてください!
●Profile●
いしづかかなさん親子料理研究家 |AMI公認国際モンテッソーリ教師モンテッソーリ教師の資格を持つ母として子育てをスタート。 食の大切さと、親子で過ごす楽しい時間に重きを置いた日々の中で、たどり着いたのが「親子料理」という過ごし方。 二人の子どもたちと一緒に作ったごはんやおやつは6年間で1500品以上。生きる力を身につけ、いのちを繋ぐ大切さを学ぶ親子料理教室「kids kitchen atelierデキタヨ!」を主宰。 湘南を拠点とした親子料理教室運営のほか、大人向けの講座・執筆・レシピ開発・監修事業・出張講座など「親子の食にまつわる環境整備」を軸に活動中。
取材・文/後藤由里子 撮影/佐山裕子(主婦の友社)